医師でも時々間違うことがある、という話

ひとつ前のブログで、人工関節は(例外はあるが)原則として障害年金3級が認められるという話題に触れました。


障害年金を扱う弁護士からすると、初歩的な知識といえるでしょう。


一方で、人工関節の置換手術を受けた方から「医師から障害年金の対象にならないと言われたが本当か?」という相談を結構な頻度で受けることがあります。


結論から言うと、この医師の説明は間違っています。ちゃんと対象になります。


間違っているのですが、では「こんな初歩的なことも医師は知らないのか?」と苦言を呈すべきかというと、実はそうもいかない経緯があります。


障害年金に類する障害者福祉制度の代表的なものとして、障害者手帳制度があります。


この障害者手帳制度においては、2014年4月の認定基準改正により、人工関節の置換手術を受けただけでは障害者手帳の対象にはならない運用に変わりました。


従来認定されていたものが認定されなくなるというなかなかインパクトのある改正内容であったため、医師が患者に間違った案内をしないよう、医師会でも周知が徹底されたようです。


その結果、おそらく多くの医師に「人工関節は障害には該当しない」という認識が強く刷り込まれたものと推測されます。


しかし、この運用変更はあくまで障害者手帳だけのもので、障害年金においては依然として認定対象のまま現在に至っています。


つまり、「人工関節は障害者手帳の対象にはならないが、障害年金の対象にはなる」が正しい認識というわけです(ややこしいですよね・・・)。


障害年金や障害者手帳の等級認定基準は度々更新されており、その結果、障害年金と手帳との間で認定基準に差異が生じたり、逆に両者の基準が統一されたりする事態が起こっています。


ブログ冒頭のような医師による制度への誤解のために、てっきり自分は障害年金の基準に該当しないと思って申請を諦めてしまった方もおそらくいるのではないかと思われます。


とはいえ、すべての医師にこういった改正・変更を追いかけ続けるよう求めるのは、実際問題なかなか酷な話です。その時間があるなら自身の医学知識や治療技術の向上に時間を使いたいというのが医師の本音でしょう。


だからこそ、こういった相談は医師だけでなく弁護士等の専門家にご相談いただくことが大切です。


私は障害年金を取り扱う弁護士である以上、こういった基準変更は熟知していなければいけませんので、日々勉強と情報収集に努めています。


障害年金の等級の見込みなどについては、医師の見解も大事ではありますが弁護士の方が正確に回答できるという場合も少なくないので、まずはお気軽に相談いただければと思います。


障害年金の認定基準には多くの原則と例外がある

障害年金の受給資格を得るためには、一定程度の障害の状態が必要となります。


そのため、障害の状態が軽いか重いかを判断するうえで、日常生活の支障や病院での検査結果の数値などは重要な要素となっており、診断書に正確に反映してもらわないと、適切な認定を受けることができないという難しさがあります。


一方で、いくつかの類型においては、そういった障害の状態の軽重があまり問題にならないものがあります。


具体例として、ペースメーカーの埋め込み手術や、人工関節・人工骨頭の置換術を行っている場合がそれに該当します。


これらの類型では、現実の日常生活への支障や関節の可動域制限の有無は不問で、上記のような手術を行っているのかどうかで等級を判断されることになります。


ネットで「障害年金 人工関節」などと検索していただくと、原則として3級が受給されると説明しているホームページも多いです。


そのため、こういった類型では特に専門家に相談せずに自分で手続を進めても簡単に受給できるのではないかと思われる方もいらっしゃるようです。


ただし、これらにも落とし穴はあります。あくまで「原則として」受給できるのであって、いくつかの例外があります。


その例外のひとつを紹介します。肘関節に人工骨頭を入れた場合です。


肘関節は上腕骨と尺骨、橈骨の組み合わせでできています。


このうち、上腕骨もしくは尺骨を人工骨頭に置換した場合は問題なく3級が受給できます。


一方で、橈骨を人工骨頭に置換した場合は、3級の対象とならないという運用とされています。


この運用は日本年金機構もホームページにも(ひっそりと)告知されています。


https://www.nenkin.go.jp/service/pamphlet/kyufu.files/01.pdf


ただ、多くのホームページでは書略されている内容で、もしかしたらこの運用を知らないという社労士等もいるのではないかと思います。


このような思わぬ落とし穴が多いので、障害年金に関しては本当に詳しい弁護士や社労士に相談することが大事です。


障害年金の受給資格を得るための「納付要件」とは?


障害年金を受給するためには一定の要件があり、そのうちのひとつに、今までちゃんと年金を納めていたかどうかという「納付要件」がございます。




まず、①初診日の前々月からさかのぼって1年間年金を納めているなら、納付要件はクリアとなります。



たとえば、令和5年1月に初めて病院に行ったという場合には、その前々月である令和4年11月からさかのぼって令和3年12月までの期間の年金を納めている必要があります。



次に、仮に直近1年間で年金を納めていない期間があった場合でも、②年金加入から初診日の前々月までを通算して3分の2以上年金を納めているのであれば、納付要件はクリアとなります。



具体的には、令和元年1月に成人して年金の加入が始まり、令和5年1月に初めて病院に行ったという場合には、令和元年1月から令和4年11月までの47カ月間を通じて3分の2以上の月の年金を納めていれば大丈夫ということになります。



注意が必要なのが、この納付要件をクリアするためには、初診日までに年金を納めておく必要があり、初診日以降に追納したとしても受給資格は得られないということです。



たとえば、初診日の令和5年1月時点では年金保険料の未納があり、令和5年2月に未納していた保険料を追納した場合は、条件クリアとはならないということになります。



イメージとしては、ガンになった後にガン保険に加入して保険料を納めても、加入前に発症したガンに対して保険が下りないのと似ているかもしれません。



上記の納付要件との関係で、病院に行くタイミング等がわずかに遅れたために障害年金が受給できないというケースもあります。



たとえば、「1年間勤務した職場でのパワハラのため退職、しばらく自宅で休養したが回復せず、3カ月ほど経って初めて病院に受診、うつ病と診断された。退職後の3カ月は収入もないため年金保険料を納めていなかった・・・」などというのはよくあるケースかと思いますが、この場合は直近1年間の納付要件をクリアできないことになってしまいます。



しかし、上記のケースでもし退職してすぐに病院を受診していた場合には、1年間の保険料納付という要件はクリアとなり、問題なく受給資格を得られるはずでした。



さらにいうと、在職中に受診していれば、障害厚生年金の対象となり、手厚い保障を受けられていた可能性もあります。



障害年金の申請にあたってはこのような落とし穴も多く、事前に障害年金を扱う弁護士にご相談いただければと思います。


「弁護士」という職業にどんな印象をお持ちでしょうか?


自分でいうのもどうかと思うのですが、ご相談やご依頼いただいた方から「フレンドリーで感じがいい」「しっかり話を聞いてくれた」「わかりやすく説明してもらえた」などとお褒めの言葉を預かることがあります。



複数の弁護士に相談していたが、上記のような話した印象が決め手になって私にご依頼いただけるということも結構あります。ありがたいことです。



ただ、ひっくり返すと、世間の一般的平均的な弁護士のイメージは「横柄で気難しい」「話をあんまり聞いてくれない」「説明が不十分」ということなんでしょうか。なんとも手厳しいですね・・・。



実際のところ、じゃあ裁判所や弁護士会の会務などで顔を合わせる他の弁護士の先生方がそういう嫌な奴らなのかというと、全然そんなことはありません。



皆熱意とプライドを持って仕事に取り組んでいらっしゃると思います。



にもかかわらず、こういったネガティブな印象を与えてしまう原因としては、多くの弁護士は法律のプロとして結果で応えるということは重視する一方で、接客やコミュニケーションといったものは軽視してしまっているからではないかと私は思います。



私の所属する弁護士法人心では年間120回以上の研修が行われますが、その内容は、法律の研修=結果で応えるための実力を磨く研修だけでなく、コミュニケーションや心理学の研修=お客様の信頼や満足を得るための研修も多く行われています。



また、アンケートでの満足度調査の実施やお客様相談室の設置などは、法律事務所ではまだかなり珍しい取り組みといっていいのではないでしょうか。



弁護士に依頼することはけして小さな決断ではないかと思います。



弁護士法人心では、単なる結果の良し悪しだけではなく、気持ちの面なども含めたもう一段階上の満足を目指しています。



すでに依頼している弁護士と相性が合わなかったり、方針に疑問があるなどというような場合のセカンドオピニオンも受け付けておりますので、まずはお気軽にご相談いただければと思います。


障害年金における「社会的治癒」とは


障害年金の申請を考えている方の中には、過去に病気を発症して通院していたがいつのまにか通院しなくなり、しばらく経ってからまた症状が悪化して通院を再開したという人が少なからずいらっしゃいます。



障害年金の場合、初めて病院に通ったのがいつなのか(初診日)が大事になりますが、この場合、初診日はいつになるでしょうか。



最初に通院した日でしょうか。それとも通院を再開した日でしょうか。



原則としては、医学的な因果関係があるならばそれは一連一体の病気であり、最初の通院が初診日となります。



しかしながら、医学的には一連一体の病気(=医学的には治癒していない)であっても、一定の条件下においては、一度社会的に治癒したものと扱い、両者を別々の病気として扱う場合があります。



これを社会的治癒といいます。



社会的治癒が認められる条件は、明確に定まっているわけではありませんが、



・長期間治療行為(通院や服薬など)を行っていないこと



・通院の空白期間中、社会復帰(就労など)を果たしていること



などの事情を踏まえて総合的に判断するとされています。



どの程度の期間通院をしていなければ社会的治癒に該当するのかは、傷病の性質などに応じてケースバイケースになります。



また、単に経済的理由であったりとか病院が嫌いで通院していないようなケースですと、社会的治癒は認められません。



この社会的治癒が認められると、通院を再開した時が初診日となります。



そのため、たとえば最初の通院を初診日とされてしまうと納付要件を満たさず申請できないケースとか、もしくは昔過ぎて記録が残っておらず初診の証明が不可能であるようなケースで、初回的治癒を主張することで救済されることがあります。



一方、社会的治癒の判断は最終的には日本年金機構側で行うため、こちらが望んでいないのに社会的治癒であると判断されることもあるので注意が必要です。



その場合、たとえば通院再開が最近でまだ1年6か月を経過していないから申請を見合わせないといけなくなるなどの不都合が生じることもあります。



社会的治癒の可否は専門的な判断が必要になりますので、過去に通院の空白期間があるような方は障害年金に詳しい弁護士の相談してみてはいかがでしょうか。

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初診日の病院にカルテが残っていない場合の対処法


障害年金の申請に際しては、申請しようとしている病気やケガの初診日を必ず明らかにしないといけません。



そのため、原則として初診でかかった病院に「受診状況証明書」という書類を作成していただく必要があります。



それにもかかわらず、初診日がずっと昔で、すでにカルテを破棄していて作成不能な場合や、病院そのものが閉院してしまっているという場合があります。その結果、障害年金の請求を諦めてしまう人もいるようです。



しかし、このような状況であっても、まだ障害年金の請求を諦めるのははやいです。



初診の病院で受診状況証明書を作成できない場合でも、別の方法で初診日を明らかにすることができれば、障害年金の申請は可能です。



初診の証明の代替手段としては、次の病院のカルテを用いるという方法が考えられます。



たとえば、次の病院に初診の病院からの紹介状が残っていたりとか、カルテに「〇年△月頃、××病院受診、その後当院に転院」などと記録されている場合には、初診の証明ができる可能性があります。



また、お手元に初診の病院の診察券や領収書、当時の診断書が残っているなら、その内容次第で初診の証明に使える場合があります。



そのほか、過去に障害者手帳の申請をしていた場合、都道府県や市町村にそのとき提出した診断書が残っていれば、開示請求を行ってこれを入手することで証拠として使える場合があります。



また、閉院した病院であっても、5年間は管理責任者がカルテを保管する義務を負っています。そのため、当時の院長などが別の病院に移っているなど消息が追える場合は、閉院していてもカルテを入手できる可能性があります。



弁護士であれば、弁護士会照会制度などの弁護士特有の権限を駆使して、一般の方や社労士ができない方法で証拠資料の収集を行うことも可能です。



初診日の証明でつまづいてしまったときは、弁護士に相談していただければ解決方法が見つかるもしれません。


詐欺破産罪


つい先日、ある破産者が「詐欺破産」の罪で逮捕されたというニュースが報道されました。



詐欺破産とは、債権者を害する目的で、財産を隠匿するなどして破産手続を取る行為で、10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金という非常に重い犯罪です(破産法265条)。



本来、自己破産する場合には、破産者は一定の財産を除いては、所有する財産を清算して債権者に分配しないといけません。



しかし、ニュースの件では、破産者は破産直前に時価約600万円の暗号資産を海外の口座に移し、それを破産手続の際に申告しないで分配を免れようとしたようです。



自己破産の際には、裁判所から給与明細や源泉徴収票、保有している口座の通帳の写しなど、多くの資料の提出が求められます。



その目的のひとつが、裁判所が破産者のお金の流れを調査し、今回の件のような財産隠しをしていないかを確かめることにあります。



このニュースの件では、破産者が暗号資産の存在は隠したが、その他の資料を照合した結果、不自然なお金の動きを裁判所が見抜いたものと思われます。



破産の際に提出する資料はこのように大きな意味を持ちます。



そのため、資料に不足があったり、内容に不自然な点があってきちんと説明ができなかったりすると、詐欺破産を疑われるというレベルまでは行かないにしても、破産の可否に影響を及ぼす可能性もあります。



破産の申立を行う場合に、資料に不足はないか、不自然な点はないかのチェックは、弁護士が最も多くの時間と労力を費やすところのひとつといえます。


会社代表者の破産


コロナの影響でしょうか、最近、会社を経営していた方からの破産の相談がちらほら寄せられています。



会社といっても、多くのケースは個人事業主が事業を法人化した一人会社というケースが多いです(従業員を何十人も雇っている会社は多くが顧問弁護士をつけているでしょうから、そういった会社はその顧問弁護士に破産手続も頼むのでしょう)。



千葉を含む多くの裁判所は、このような会社代表者個人が破産するケースでは、小規模な会社であっても、同時に破産を申し立てるよう要請されることが通常です。



形式的には、会社と個人は別人格ではあります。



ただ、もし会社代表者が破産してしまうと、法律上、破産開始決定により、会社代表者の地位を失うことになります。



そうすると、会社が動いているケースはもちろん、動いていない場合であっても代表者不在の法人の清算や管理は誰がするのかという問題が生じてしまいます。



そのため、会社と代表者は同時に破産を申し立てる必要があります。



破産申し立てをする場合、破産者の住所地の管轄の裁判所に申し立てる必要がありますが、個人の住所と会社の住所とが異なっている場合でも、同じ地方裁判所に申し立てることができます。



また、会社の破産が絡む場合は、原則として管財事件となり、そのための予納金を裁判所に納める必要がありますが、同時に申し立てることで予納金は1件分で済みます。



会社破産(法人破産)は個人の破産と比べて手続や用意すべき資料などが一層複雑になるため、弁護士に相談することをおすすめします。


精神の障害で、障害年金の対象となる病名・ならない病名


ひと言で「精神障害」といっても色々な病名があります。


その病名によって、障害年金の対象となるもの・ならないものがあることはご存じでしょうか。


精神の障害が障害年金の対象となるかならないかは、原則として、「ICD-10」という病気の診断カテゴリーの分類によって区別することとされています。


たとえば、うつ病や双極性障害、統合失調症、発達障害などは、障害年金の対象となります。


一方、適応障害やパニック障害、不安障害、人格障害などは、原則として障害年金の対象にならないとされています。


実際のところ、目に見えない精神の障害をうつ病などと診断するのか適応障害などと診断するのか、その区別は必ずしも明確ではないこともあります。


とはいえ、障害年金の審査においては、どちらの病名がつくか次第で、障害年金の対象となるのかならないのか、まさに天国と地獄のように結果が分かれてしまうのが難しいところです。


もっとも、対象となる病名で診断されていなかったからといって、障害年金の申請をすぐ諦めるべきではありません。


たとえば、当初は適応障害などと診断されていたが、病気が悪化し、うつ病や統合失調症と診断されるに足りる状態に至っている場合もあります。


その場合は、医師があらためて障害年金の対象疾患として診断書を書いてくれるのであれば問題はありません。


また、診断名自体は対象とならない病名であったとしても、病気の実態からして、うつなどの精神病の症状を示している場合には、例外的に障害年金の対象となる可能性があります。


ただし、障害年金は医師の診断書を中心とした書面審査が原則になるので、診断名や病気の実態をしっかりと診断書に反映してもらう必要があります。


医師は必ずしも障害年金の制度や審査基準などを熟知しているわけではありません。


そのため、患者本人や代理人弁護士から適切に働きかけをしなければ、きちんとした診断書を作成いただけないことがあります。


弁護士法人心では、診断書の作成段階からアドバイス・サポートを行っております。 自分の病気が対象になるのかどうかもわからないという段階であっても、障害年金の申請を考えている方はまずはお気軽にご相談いただければと思います。

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障害年金の遡及請求


障害年金は、原則として初診日から1年6か月後(「認定日」といいます。)に支給申請することができるようになります。



もっとも、障害年金の制度をそもそも知らなかったり、その当時は体調が悪くて身動きが取れないなど、障害認定日にすぐ申請できないことが少なくありません。



私が今まで対応してきた障害年金のご相談も、初診から1年6か月以上経ってから申請したいというケースが半分以上という印象です。



このようなケースでも、遡及請求という方法を使えば、過去にさかのぼって年金を請求するよう請求することができます。



遡及請求が認められれば、最大で過去5年間の障害年金をまとめて支給することができます。



一度に300万円以上支給されることも多くあります。



ただし、遡及請求を行う上でハードルになるのが、初診から1年6か月後時点の診断書を入手することです。



当時通院した病院にカルテ等の記録が残っていれば、その記録に基づいて書いてもらえる可能性があります。



しかし、カルテの保管期間は法律で5年間とされており、時間が経ちすぎているとカルテが破棄されてしまっているおそれがあります。



また、カルテが残っていても、その記載が必ずしも完璧とは限りません。



障害年金は専用の診断書を書いてもらう必要があり、記載事項は多岐にわたります。



医師としては、治療に必要な範囲でカルテを残すのであって、障害年金の診断書を書くために記録を残すのではありません。



そのため、診断書に必要な記載が漏れており、このような場合には医師としては「記録にない事項は書けない」と断れてしまうおそれがあります。



また、遡及請求の制度上の問題点として、あくまで認定日時点の症状で判断するので、認定日時点だとまだ症状は軽かったが、その後に悪化したようなケースでは、遡及請求は認められません。



遡及請求は過去の資料が必須であり、手続き自体も難しいため、弁護士等の専門家のサポートがないとなかなかうまく進められないケースが少なくありません。



長い間障害に苦しんでいるという方は、悩まず早めに弁護士に相談することをおすすめします。


家族が自殺してしまった場合に生命保険は受け取れるのか


最近、芸能人の自殺のニュースに触れる機会がありました。


警視庁発表の統計では、令和3年度の自殺者数は2万1007人とされ、減少傾向にはありますが、多くの人が自ら命を絶っています。


相続の場面では、故人が自殺したため、生命保険金を受け取れるのかどうかが問題になる場合があります。


また、弁護士として借金のご相談を受けるときに、「家族にこれ以上迷惑をかけられないから、いっそ死んで生命保険金で借金を返してもらおうと思うことがある」と打ち明けられることも何度かありました。


保険法51条1項は被保険者が自殺をしたときは、保険金を支払う責任を負わないとされています。


ただし、実際には、生命保険会社は上記法律の定めとは異なる独自の支払基準を設けていることがほとんどです。


保険会社は、以下のような場合には、生命保険金を支払わないと定めていることが多いようです。


① 自殺が保険金を受け取ることを主目的としている場合


たとえば、借金の返済するために自殺をして保険金を得ようと考えている場合です。


生命保険は、偶発的な事故や病気での死亡に備えることを目的としており、保険金を受け取るための意図的な自殺はその趣旨に反するからです。


② 免責期間が満了していない場合


一般的には生命保険を契約してから1年~3年程度の免責期間が設定されており、この期間中に自殺してしまった場合は、保険金を受け取ることができません。


生命保険を契約してから間もなくの自殺は、保険金目的であることが疑われるためとされています。


ただし、上記①②に該当する場合でも、うつ病などの精神障害を患っていて、正常の判断ができない状態で自殺してしまった場合には、例外的に保険金が支払われる場合があります。


その場合には、精神科や心療内科の通院記録などの証拠が求められることがあります。


もっとも、仮に生命保険が下りるとしても、残された遺族の方の悲しみは、保険から受け取れるお金では計り知れないものと思います。

思い悩んでしまったら、その悩みは自殺以外の方法で解決できないのか、まずは国や自治体でも、弁護士や医者でもいいので相談してほしいです。

働いていたら障害年金は受給できない?

障害年金のご質問・ご相談で多いものとして、「自分は働いているけど、障害年金を受給することはできるのか?」というものがあります。

日本年金機構のホームページを見ると、障害年金の認定基準について以下のような記載があります。

障害の程度1級
他人の介助を受けなければ日常生活のことがほとんどできないほどの障害の状態です。身のまわりのことはかろうじてできるものの、それ以上の活動はできない方(または行うことを制限されている方)、入院や在宅介護を必要とし、活動の範囲がベッドの周辺に限られるような方が、1級に相当します。

障害の程度2級
必ずしも他人の助けを借りる必要はなくても、日常生活は極めて困難で、労働によって収入を得ることができないほどの障害です。例えば、家庭内で軽食をつくるなどの軽い活動はできても、それ以上重い活動はできない方(または行うことを制限されている方)、入院や在宅で、活動の範囲が病院内・家屋内に限られるような方が2級に相当します。

障害の程度3級
労働が著しい制限を受ける、または、労働に著しい制限を加えることを必要とするような状態です。日常生活にはほとんど支障はないが、労働については制限がある方が3級に相当します。

(以上、日本年金機構のホームページより)

これだけ見ると、一番症状が軽いとされる3級でも、「労働が著しい制限を受ける」状態でないといけないように読めます。

そのため、「働いていると障害年金は受給できない」と思ってあきらめてしまう方が少なくないようです。

もっとも、実際は、障害年金は働いているからと言って必ずしも受給できなくなるとは限りません。

たとえば、うつ病や双極性障害といった精神の障害では、「労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況などを十分確認したうえで日常生活を判断する」ものとされています。

ただし、障害年金は書面審査が原則であるため、診断書や病歴・就労状況等申立書に上記の就労状況がきちんと言及されていないと、症状が過小評価されてしまうおそれがあります。

こういったケースでは、障害年金申請の前に、診断書や病歴・就労状況等申立書等に不備がないか、障害年金に精通する弁護士に相談することをおすすめします。

障害年金の請求は1年6か月待たないといけないのか


障害年金の請求をするためには、原則として初診の日から1年6か月の経過を待つ必要があります。



ただし、症状や治療の内容によっては、1年6か月を待たずに請求することが可能な場合があります。



たとえば、事故で手足を切断することになってしまった場合などは、手術を行った時点で、もうそこから1年6か月経とうが手足が生えてくるということはあり得ないため、その時点から障害年金を請求することができます。



同様に、人口関節や心臓にペースメーカーを入れた場合なども、手術を行った時点から請求することが可能です。



また、脳梗塞・脳出血によって身体マヒが残るなど身体の機能障害が残ってしまった場合は、初診から6か月経過し、かつ主治医がこれ以上改善の見込みが乏しい(症状固定)と判断した場合は、その時点から請求することができます。



この他にもいくつかの例外があります。



このような認定日の例外は、遡及請求(障害年金を過去にさかのぼって請求すること)を行う際にも重要になってくることがあります。



遡及請求の場合には認定日の診断書を過去の記録に基づいて書いてもらう必要にありますが、たとえば、初診から1年6か月が経つ前に人工関節の手術をして、医師から「もうこれ以上はリハビリをしても良くならないから」といわれて通院をやめてしまった場合に、「1年6か月の時点では通院していないから当時の診断書を書いてもらうことはできない」と判断して遡及請求を諦めてしまう方がいらっしゃいました。



この場合は、人工関節の手術をした日の病状を診断書に書いてもらえれば、問題なく遡及請求をすることができます。



実は、診断書を作成する医師も、このような例外があることをよく理解していないことが少なくありません。



そのため、患者に間違った案内をして請求の機会を逃してしまったり、診断書が書ける時期ではないと誤解しているため、患者からの作成依頼を拒否されてしまうことがあったりします(医師も悪気があってやっているわけではなく、本当に知らなくて間違った対応をしていることがほとんどです)。



そのようなケースでは、弁護士が病院との間に入り、制度の内容を説明することで診断書を作成してもらえることも少なくありません(複雑な制度の話なので、患者が問診のときに説明してもうまく伝わらなかったり、医師が聞く耳を持ってくれないということが結構あります。。。)。



障害年金の請求は専門的な内容が多いので、手続を進める際は、弁護士にご依頼いただくことが確実かつスムーズです。


国際相続の準拠法と裁判管轄

国際化が進んだ近年では、亡くなった方が外国籍のケースや、亡くなった方は日本人だが相続人が外国籍というケースの相続の相談を受けることがあります。



この場合、どの国の法律に従って相続が行われるのでしょうか。



また、手続の際に裁判所を利用しないといけない場合、日本の裁判所を利用することができるのでしょうか。



こういった国際相続について、法の適用に関する通則法(通則法)第36条は、「相続は、被相続人の本国法による。」と規定しています。



つまり、亡くなった方が日本国籍なら日本の法律が、外国籍ならその外国の法律が適用されることとなります。



一方、相続に関する手続のうち、たとえば遺産分割調停や相続放棄の申立てなどは裁判所を通じて行うこととなりますが、日本の裁判所を利用できるかどうか(管轄)は、家事事件手続法に規定があります。



同法3条の11第1項は、「裁判所は、相続に関する審判事件について、相続開始の時における被相続人の住所が日本国内にあるとき、住所がない場合又は住所が知れない場合には相続開始の時における被相続人の居所が日本国内にあるとき、居所がない場合又は居所が知れない場合には被相続人が相続開始の前に日本国内に住所を有していたとき(日本国内に最後に住所を有していた後に外国に住所を有していたときを除く。)は、管轄権を有する。」としています。



亡くなった方が死亡当時日本に住んでいれば、国籍にかかわらず日本の裁判所で手続を進めることが可能ということになります。



そうすると、外国籍の方が日本国内で亡くなった場合、日本の裁判所が海外の法律に従って判断を下すということになります。



韓国籍や中国籍などの相続について裁判所もある程度手馴れているようですが、国によっては裁判官もその国の法律を知らないということが当然あるようです。



そういったケースでは、裁判所への申立ての際に、代理人弁護士にてあらかじめ法令調査を行ったうえで申し立てをするよう命じられることがあります。



申立てさえしてしまえば裁判所が勝手に判断してくれるというわけにはいかないのです。



最近私が扱った案件では、被相続人がラオス国籍の方で、ラオスの法律で相続放棄はどのような要件で可能なのか確認したうえで裁判所に申立てするよう命じられたことがありました。



幸い、ラオスの民法典は日本の法整備支援を得てつくられたもので、奇跡的に日本語訳があったのでなんとか調査することができました。



もし日本語訳がなかったら、ラオス語で書かれた条文を翻訳するところから始めないといけませんでした。 参考までにラオス語で書かれたラオスの民法典を載せておきます。みなさんは読めるでしょうか。

障害年金等級の併合認定

弁護士の伊藤です。


今回は障害年金の併合認定について,少しお話したいと思います。


すでに障害を抱えている場合に,別の障害も発症してしまうというケースがあります。


たとえば,うつ病が発症している状態で事故に遭い,片腕が動かせなくなってしまった場合(一上肢の用を全廃したもの)などです。


この場合,2つの障害がそれぞれ2級相当であったとしても,2級の障害年金が2つ支給されるわけではありません(支給金額が2倍になるわけではありません)。


もっとも,複数の障害をかかえている場合,日常生活や仕事への影響は,障害が一つだけの場合と比べて大きいことが通常です。


そこで,複数の障害が認められる場合は,障害の内容にもよりますが併合認定を行うことで,より上位の等級が認められることがあります。


上述のケースだと,うつ病の2級と,一上肢の用を全廃したものの2級とが併合認定され,1級の等級が認められます。


この場合,2級の認定と比べて,障害年金の支給額も増えることとなります。


併合認定は,


・複数の障害について,まとめて障害年金の初回申請するケース,


・すでに障害年金を支給中に,後発の障害についても追加で申請して上位の等級を目指すケース,


・前発の障害で一度障害基礎年金を申請していたが支給に至らなかったケースで,後発の障害が加わることで初めて支給の対象となる可能性があるケース


など,いくつかパターンが考えられます。


ケースによって,申請の方法や注意すべき点が変わってくることがあります。


また,複数の障害が認められれば,すべてのケースで自動的に上位の等級に繰り上がるわけではありません。


障害の内容や程度にもよってくるところなどで注意が必要です。


併合認定の基準は以下の厚生労働省のホームページにガイドラインが公開されています。

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12501000-Nenkinkyoku-Soumuka/0000054720_1_4_3.pdf


複数のケガや病気の症状で日常生活や仕事に支障がある方は,併合認定によりより高い等級の認定を受けられる可能性があります。


すでに一度障害年金の認定を受けており,等級が変わることはないと思って申請していない方や,過去に不支給決定がされて,障害年金の申請をあきらめてしまっている方も少なくないようです。


自分や家族が該当するかもしれないと思った方は,障害年金に精通する弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

時効の援用と信用情報

新規でローンを組もうと思ったり,クレジットカードを作ろうと思ったら審査が下りず,信用情報を調べたら,過去の借金の滞納の記録が残っていたという相談を受けることがあります。


さらに,滞納は5年以上前で,「5年で時効となり消えないのか」とか「信用情報の保有期間は5年と聞いたが,なぜまだ残っているのか」といった質問を受けることがあります。


そこで今回は時効の援用と信用情報についてお話ししたいと思います。


まず,時効の援用についてですが,借金は最終取引から5年を経過することで時効となります。


ただし,5年経過すれば自動的に消滅するのではなく,債務者から債権者に対して時効により消滅させるという主張を通知する必要があります。


一方,信用情報についてですが,信用情報機関によって保有期間は異なるものの,短いところだと1年程度,長いところだと5年程度記録を残すという運用となっています。


この保有期間については,借金が完済された場合や,消費者金融から債権回収業者に譲渡された場合の情報は,上記の保有期間で削除されることになります。


しかし,返済を継続している場合や,返済しないまま滞納になっている場合は,保有期間のカウントが開始することなく記録は残り続けることとなります。


つまり,借金の処理をしない限り,具体的には時効の援用をしない限りは,たとえ5年以上前の借金であっても,信用情報には残り続けることとなります。


時効の援用を行った場合,正確には信用情報から直ちに削除されるのではなく,信用情報の記載が「異動(滞納)」から「完了」に訂正・変更されます。


この時点で,滞納扱いから完済と変わらない状態に変更されることが一般的です。


その後,完了になってから保有期間が経過されれば,信用情報は完全に削除されることとなります。


過去の借金についての清算を考えている方は,弁護士に相談してみるとよいでしょう。

プロ野球のドラフト会議を見て思うこと

普段は法律ばかりで堅苦しいこのブログですが、たまには法律以外のことも話したいと思います。

10月11日、プロ野球のドラフト会議が行われました。

日本でプロ野球選手になるためには、このドラフト会議で球団に選ばれなければいけません。

私の母校の大学は結構な頻度でプロ野球選手を輩出するので、毎年気になって見てしまいます。

今回のドラフト会議、私が印象的だったのは、國學院大學の福永選手・川村選手、新潟医療福祉大学の桐敷選手・佐藤選手といった、同じ大学から同時に指名された選手たちです。

複数の候補選手がいる学校は、選手たちは同じ部屋に集まって指名を待っています。

指名の瞬間の動画をみていて気付いたのが、どの選手も自分自身が指名されたときは静かに喜びをかみしめる様子である一方、学友が指名された瞬間は、自分のこと以上に喜んでいるのが印象的でした。

自分よりも他人の幸せを喜ぶできることがなんて素敵なんだろうと、とても感動を覚えました。

さて、弁護士の場合だと、司法試験の合格発表がいわば「プロ」に進めるかどうかの運命の瞬間といえるかもしれません。

今年は9月7日に合格発表が行われ、1421人が合格しました。

プロ野球選手ほどではないでしょうが、私も、合格発表は、合格か不合格か、ドキドキしながら発表を学友とともに迎えました。

思い返してみれば、私も自分の番号があったときは、喜んではしゃいでというよりかは、ほっと安堵するような、受かってよかったという気持ちだったように思います。

一方で、学友も無事合格しているとわかったときは、自分以上にうれしく、肩を抱き合って祝福したことを覚えています。

目指すものは違えど、仲間と共に同じ目標を目指す人の気持ちというのは共通するところがあるのかもしれませんね。

障害年金の種類と金額

1 障害年金は大きく分けて2種類ある


 障害年金には、①障害基礎年金と、②障害厚生年金の2種類があります。


 どちらが支給対象になるかは、初診日に加入していた年金制度によって決まります。


2 障害基礎年金


 障害基礎年金は、初診日に国民年金に加入している方、たとえば、自営業者、学生、専業主婦などが対象となります。


 障害基礎年金は1級と2級の等級が設定されています。


 障害基礎年金の支給金額は定額です。加入年数にかかわらず、等級が同じであれば、だれもが同じ金額をもらえます。


 具体的には、1級の場合は年額97万7125円、2級の場合には年額78万170 0円となります。


 また、障害年金の受給者に生計を維持されている子供がいる場合には、子の加算も受けることができます。


 子の加算については、子ども2人までは1人につき22万4900円、子ども3人目からは1人につき7万5000円の加算となります。


3 障害厚生年金


 障害厚生年金は、初診日に厚生年金に加入している方、たとえば会社員や公務員などが対象となります。


 障害厚生年金は1級・2級・3級の等級が設定されています。


 障害厚生年金の支給金額は、平均報酬月額(それまでもらっていた報酬額)や加入月数によって計算されます。


 1級の場合は、2級・3級の場合の1.25倍の金額が支給されます。


 また、等級が2級以上でかつ配偶者がいる場合には、22万4900円の加給年金額が加算されます(65歳未満で年収が830万円未満の場合に限ります)。


4 障害年金は弁護士に相談を


 このように、障害年金はいくつかの種類と金額に分かれており、自分はどの対象となるか、支給金額はいくらになりそうなのか、そもそも支給の可能性があるのかどうかなどは、専門家である弁護士に相談してみることをおすすめします。

知的障害と障害年金


障害年金は、身体障害やうつ病などの精神障害などの他にも、先天的な知的障害も支給の対象になる場合があります。

本日は、知的障害で障害年金を申請するうえでのポイントをご説明いたします。

1 初診日

原則として、障害年金の申請には、初めて病院で診断を受けた日(初診日)がいつであるかが明らかでないといけません。

しかし、例外的な取り扱いとして、知的障害は先天的なものと考えられているので、初診日は原則として出生の日とされます。

そのため、初診日の証明は原則として不要となります。

2 障害認定日

知的障害の場合は、20歳の誕生日の前日が障害認定日となります。

3 納付要件

障害年金の支給を受けるためには、初診日までに一定の保険料を納めている必要がありますが、初診日が20歳より前の場合は、保険料の納付は不要となります。

知的障害の場合は、初診日は出生の日とされる関係で必然的に20歳前の初診日となりますから、納付要件も不要となります。

ただし、知的障害の場合は、20歳を過ぎて就職し厚生年金に加入していたとしていたとしても障害厚生年金の支給の対象にはならず、障害基礎年金のみが支給の対象となることに注意が必要です。

4 知的障害で障害年金が支給されるかの基準

障害基礎年金には等級が1級もしくは2級のみしかなく、障害厚生年金の場合には比較的軽度の場合に認められる3級が存在しないので、ある程度の日常生活や社会生活の支障が求められることになります。

1級ないし2級に該当するか、もしくは非該当になるかの判断は、一定の目安はありますが、様々な要素を考慮したうえで、障害認定審査委員が専門的な判断に基づき、総合的に判断するものとされています。

5 療育手帳との関係

知的障害を持っている場合、自治体から療育手帳の交付を受けている方も少なくありません。

療育手帳の制度は障害年金の制度と完全に別物となりますので、療育手帳の交付を受けている=障害年金が支給されるというわけではありません。

もっとも、「精神障害に係る等級判定ガイドライン」によれば、療育手帳の有無や区分を考慮するものとされており、療育手帳の判定区分が中度以上(知能指数がおおむね50以下)の場合は、1級また2級の可能性を検討し、それより軽度の区分である場合は、不適応行動等により日常生活に著しい制限が認められる場合は、2級の可能性を検討するものとされています。

知的障害の場合は、四肢の欠損などの身体障害と比べると明確な基準がない分、申請の際には様々な資料を他覚的に検討する必要があります。

ご自身やご家族が知的障害を抱えており、障害年金の申請を考えている方は、弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士による障害年金申請のサポート


障害年金は公的年金のひとつで、病気やケガのために就労や日常生活に支障があるときに支給を受けることができます。

障害年金の特徴として、その病気やケガになった原因は問われません。

たとえば、労災保険は仕事中や通勤中の事故、自賠責保険は交通事故でないと受給することができませんが、障害年金にはそのような制限がありません。

令和2年度の統計によると、日本全国の障害のある人は964万7000人に上り、年々増加傾向にあります。(令和2年度障害者白書より)。
https://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/r02hakusho/zenbun/siryo_02.html

このような障害を抱える人の生活の保障は、大きな社会的な課題のひとつになっているといえます。

一方で、その生活保障の中核となる障害年金の受給者数は、令和元年度時点で221万1000人にとどまっています(令和元年度厚生年金保険・国民年報事業年報より)。
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/nenkin/nenkin/toukei/nenpou/2008/dl/gaiyou_r01.pdf

つまり、障害者の700万人以上が、障害年金を受給できていないままということになります。

その原因としては、障害年金の申請手続の煩雑さがあると思われます。

障害年金の申請には、医師に診断書の作成を依頼するほか、病歴や就労状況の報告書、加入している年金の種類によって異なる申請書などを作成して提出する必要があります。

病気やケガで疲弊している方には、少なからぬ負担であると思われます。

また、障害年金を受給するためには一定の要件があり、診断書の記載内容が不十分・不適切であったため、本来受給の要件を満たすべき障害が認定されなかったというケースも多くあると推測されます。

適切な認定を受けるためには、診断書の作成から申請の手続きまで、専門家のサポートがとても重要であるといえます。

そこで、弁護士法人心は、この障害年金の問題を集中的に取り扱う「障害年金チーム」を結成し、障害年金に関するご相談や申請代行などのサポートをさせていただいております。

障害年金は過去に受給できたはずの金額を遡って請求できる可能性もあり、その場合は時効で権利が消滅することのないよう、できるだけ早めに申請を行う必要があります。

障害年金の申請を考えている方は、お気軽にご相談いただければと思います。