医師でも時々間違うことがある、という話

ひとつ前のブログで、人工関節は(例外はあるが)原則として障害年金3級が認められるという話題に触れました。


障害年金を扱う弁護士からすると、初歩的な知識といえるでしょう。


一方で、人工関節の置換手術を受けた方から「医師から障害年金の対象にならないと言われたが本当か?」という相談を結構な頻度で受けることがあります。


結論から言うと、この医師の説明は間違っています。ちゃんと対象になります。


間違っているのですが、では「こんな初歩的なことも医師は知らないのか?」と苦言を呈すべきかというと、実はそうもいかない経緯があります。


障害年金に類する障害者福祉制度の代表的なものとして、障害者手帳制度があります。


この障害者手帳制度においては、2014年4月の認定基準改正により、人工関節の置換手術を受けただけでは障害者手帳の対象にはならない運用に変わりました。


従来認定されていたものが認定されなくなるというなかなかインパクトのある改正内容であったため、医師が患者に間違った案内をしないよう、医師会でも周知が徹底されたようです。


その結果、おそらく多くの医師に「人工関節は障害には該当しない」という認識が強く刷り込まれたものと推測されます。


しかし、この運用変更はあくまで障害者手帳だけのもので、障害年金においては依然として認定対象のまま現在に至っています。


つまり、「人工関節は障害者手帳の対象にはならないが、障害年金の対象にはなる」が正しい認識というわけです(ややこしいですよね・・・)。


障害年金や障害者手帳の等級認定基準は度々更新されており、その結果、障害年金と手帳との間で認定基準に差異が生じたり、逆に両者の基準が統一されたりする事態が起こっています。


ブログ冒頭のような医師による制度への誤解のために、てっきり自分は障害年金の基準に該当しないと思って申請を諦めてしまった方もおそらくいるのではないかと思われます。


とはいえ、すべての医師にこういった改正・変更を追いかけ続けるよう求めるのは、実際問題なかなか酷な話です。その時間があるなら自身の医学知識や治療技術の向上に時間を使いたいというのが医師の本音でしょう。


だからこそ、こういった相談は医師だけでなく弁護士等の専門家にご相談いただくことが大切です。


私は障害年金を取り扱う弁護士である以上、こういった基準変更は熟知していなければいけませんので、日々勉強と情報収集に努めています。


障害年金の等級の見込みなどについては、医師の見解も大事ではありますが弁護士の方が正確に回答できるという場合も少なくないので、まずはお気軽に相談いただければと思います。