確定申告を過少申告している場合の休業損害・逸失利益

今年の確定申告は4月15日まで延長されていますが、みなさんは確定申告はもう済んでいるでしょうか。

 

確定申告の内容は、交通事故の損害賠償請求においても関係してくることがあります。

 

自営業者の場合、交通事故により被った休業損害や後遺障害による逸失利益を計算するにあたっては、確定申告の所得金額をベースに日額や年額を計算することが一般的な実務の取り扱いとなっています。

 

当然ながら、所得が大きいほど賠償されるべき損害額も大きくなるのが通常です。

 

しかし、中には、節税(脱税?)を行った結果、確定申告の所得を低く抑えているケースがあります。

 

その場合、確定申告上の所得で計算すると、現実に被った損害と比べて低い金額でしか計算されないことになります。

 

このような場合に、「本当はもっと所得があったんだ!(=だから休業による損害はもっと大きいんだ!)」と主張することは、主張自体が許されないとまではいわれませんが、その認定に当たっては非常に厳しくジャッジされることになります。

 

交通事故を専門的・集中的に扱う東京地方裁判所民事第27部の裁判官は、確定申告外の所得があるという被害者の主張について、以下のように指摘しています。

 

まず、確定申告書に一定額の所得を記載したということは、自らの所得が申告所得額に限られるということをほかならぬ被害者自身が表明していたことになります。

 

これを損害賠償請求の場面になったら自ら有利になるように主張を都合よく変えるということは、自己矛盾の主張であるとして、被害者の主張全体が疑わしいという評価を受けることになります。

 

そのため、売上及び経費の全体を客観的な裏付けのある証拠で立証したうえ、ここから確定申告書に記載した売上及び経費を控除して計算した結果、申告外所得が残ることまでを裏付けをもって立証する必要があるとされています。

 

具体的には、会計帳簿や伝票類、日記帳、レジの控え、契約書、納品書、請求書、領収書、預金通帳等を網羅的に用いて、現実の売上と経費を裏付けしていく必要があります。

 

なお、確定申告額が過小である場合には修正申告をすることができます。

 

修正申告を行うことは、修正申告で申告した所得があることを基礎づける事情の一つとは考えられていますが、これだけで修正申告での所得額が認定されるわけではなく、上述した会計帳簿等の証拠によって当該修正申告の内容が裏付けられなければなりません。

 

 

・・・節税対策もいいことばかりではないということですかね。

 

ちなみに、当事務所では弁護士法人のほか、連携する税理士法人もございますので、税金についてのご相談もお気軽にお問合せいただければと思います。