弁護士法人心では、交通事故の後遺障害の等級獲得に特に力を入れております。
治療段階から申請まで1からサポートさせていただく場合や、すでに結果が出てしまっている後遺障害の認定が妥当でない場合の異議申し立てなど、適切な後遺障害等級が認定されるよう、弁護士・スタッフが総力を挙げて取り組ませていただいております。
さて、今回は、私が数多く取り扱っている後遺障害の異議申し立ての中でも、少し珍しい申立てのケースをご紹介したいと思います。
多くの場合、後遺障害の異議申し立ては、非該当だった場合に等級獲得を目指すケースや、低い等級を上位の等級に引き上げる目的で行います。
しかし、今回私が取り扱ったケースは、異議申し立てを行っても、認定内容(認定の理由)は変わる可能性があるが、最終的な後遺障害等級自体は変わらないことが予想されるケースでした。
最終的な等級が変わらないと、自賠責保険からもらえる保険金の金額も変わりません。
しかし、今回のケースでは、最終的な等級は変わらなくても、異議申し立てをすることの意味があるケースだったので、チャンレンジすることにしました。
問題のケースでは、バイクで運転中事故に遭い、複数箇所の骨折など全身にけがを負ったものとなります。
主な残存症状は、①顔面の醜状損害、②その他各所の手術痕・傷痕、③左橈骨遠位端骨折に伴う左手関節の可動域制限、④鎖骨骨折に伴う鎖骨付近の可動時の違和感、異音、⑤鎖骨骨折後の拘縮に伴う左肩可動域制限、⑥右橈骨遠位端骨折に伴う左手関節の可動域制限、⑦左手親指の脱臼後の可動域制限の7つでした。
これらの症状に対して、最初の申請結果は、
① 顔面の醜状損害
→★9級16号
② その他各所の手術痕・傷痕
→基準値に至らず非該当
③ 左橈骨遠位端骨折に伴う左手関節の可動域制限
→★12級16号
④ 鎖骨骨折に伴う鎖骨付近の可動時の違和感、異音
→基準値に至らず非該当
⑤ 鎖骨骨折後の拘縮に伴う左肩可動域制限
→基準値に至らず非該当
⑥ 右橈骨遠位端骨折に伴う左手関節の可動域制限
→基準値に至らず非該当
⑦ 左手親指の脱臼後の可動域制限
→事故時の受傷か断定できないため、因果関係不明のため非該当
と認定されました。
複数の後遺障害等級が認められると「併合」という等級調整の処理が行われます。
このケースだと、①と②が併合処理され、高い方の等級である9級が1つ繰り上がり、最終的な等級は8級であるとの判断がされました。
この認定に対して、私が異議申し立てのターゲットに絞ったのが、⑦の左手親指の脱臼後の可動域制限です。
もし事故との因果関係が認められれば、単独では10級7号が認められる可能性がありました。
しかし、この場合、仮に異議が成功しても、最終的な後遺障害等級は変わりません。
まず、②の12級と⑦の10級は同一の系列の障害として取り扱われ、併合の方法に準じて高い方の等級である10級が1つ繰り上がり9級相当と認定されます。
その後、さらにそれが①の9級16号と併合処理され、9級がまた1つ繰り上がり8級と認定されるのですが、これでは最終的な後遺障害等級は、異議前と変わりません。
しかし、同じ8級でも、異議前と異議後では、大きな違いがあります。
・・・長くなったので、次回にその理由をご説明させていただきたいと思います。