交通事故に遭うと,過去に事故に遭ったことのある人から「交通事故に遭ったら通院すればするほど慰謝料がもらえる(通院しないと損する)」と言われることがあるようです。
保険会社は,慰謝料を支払う際,強制加入保険である自賠責保険の慰謝料の計算基準に従って計算することが多くあります。
自賠責保険の慰謝料の計算基準は,
① 事故日~治療終了までの通院期間×4300円
② 通院実日数×2×4300円
のいずれか安い方を慰謝料の金額とします。
たとえば,3カ月間で毎月5回,合計15日通院した場合は,
①90日×4300円=38万7000円
②15日×2×4300円=12万9000円
の安い方,つまり12万9000円が慰謝料となります。
こうしてみると,上記の計算基準では,通院回数が少ないとなんだか損しているように感じるかもしれません。
そのため,交通事故の被害者の中には,慰謝料で損したくないから,ムリして通院される方もいるようです。
ただ,上記の計算基準の関係でいえば,2日に1回以上のペースで通院しても,慰謝料がさらに増えるということはありません。
また,慰謝料目的で不必要な通院を繰り返した場合,慰謝料を計算する際の通院日数にカウントしてくれないばかりか,過剰な通院については治療費も支払ってもらえない可能性もあり得ます。
なかには,病院と共謀して通院していないのに通院したと申告するケースも後が絶ちませんが,完全な詐欺です。
通院は,あくまで医師と相談しながら適切な期間・頻度で通院していくことが求められます。
もっとも,通院日数の多い少ないで機械的に慰謝料を計算すると,実態に反して慰謝料が過小評価されてしまう場合もあります。
たとえば,事故に遭って骨折してしまい,骨がくっつくまではリハビリがスタートできないので,医師から自宅での安静を指示されているような場合などです。
骨折が伴うようなケースは大きな事故であることが多く,また,骨がつくまでの間は痛みが酷いことも多いはずで,平均的な交通事故のケースと比べても大きな慰謝料が認められるべきところです。
しかし,この場合だと,通院実日数×2×4300円で計算したわずかな慰謝料しかもらえないことになってしまいます。
このようなケースでは弁護士を通しての交渉が有効であることが多いです。
弁護士が交渉する場合,自賠責保険の基準ではなく,裁判所の認定基準にしたがって慰謝料を計算するよう交渉することができます。
裁判所の認定基準も通院実日数の影響はありますが,原則としては通院の期間の長短をベースに計算することとされており,多くの場合で慰謝料が増額となる可能性があります。
通院回数を理由に低額な慰謝料が保険会社から提案されてきた場合は,まず弁護士に相談してみることをおすすめいたします。