新型コロナウイルス

新型コロナウイルスが全世界的に流行しています。

東京でもマスク姿の人が多く見られますね。

 

コロナウイルスの流行に対して,軽い体調不良でも大事をとって休業を考えている労働者や,イベント開催の中止や社員の出勤制限などを検討している会社が増えてきていると思います。

 

この場合,労働者の賃金の取り扱いはどうなるのか問題になります。

 

労働者の自主的な判断で休む場合,通常の病欠とほぼ変わらない扱いになります。

 

有給を使用して休むか,そうでない場合は欠勤扱いで賃金は原則として支払われないこととなります。

 

会社判断で労働者の出勤を制限する場合,労働基準法26条は「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。」と定めています。

 

この「使用者の責に帰すべき事由」は労働者保護のため広くとらえることとされており,イベントを中止して人員が余る場合や感染予防のために就労制限する場合も,これに該当するものとされています。

 

そのため,社会的な要請と言えども,一定の賃金を支払わなければいけないこととなります。

 

なお,労働安全衛生法68条は,「事業者は、伝染性の疾病その他の疾病で、厚生労働省令で定めるものにかかつた労働者については、厚生労働省令で定めるところにより、その就業を禁止しなければならない。」とされています。

 

この場合は,法令に基づいて就業禁止を指示するので,「使用者の責に帰すべき事由」にはあたらず,賃金を支払わなくても良いこととなります。

 

ただし,新型コロナウイルスは指定感染症として定められています。

 

これにより,上記の労働安全衛生法68条ではなく,感染症法という別の法律が適用されることとなり、都道府県知事が該当する労働者に対して就業制限や入院の勧告等を行うことができることとなります。この場合も,「使用者の責に帰すべき事由」にはあたらず,賃金を支払わなくても良いこととなります。

 

もっとも,この場合,就業制限の判断は都道府県知事ということになり,会社が判断するものではなくなってしまいます。

 

このように,労働者が自主的に休むと,基本的には賃金がもらえなくなるので,なかなか休みにくいと思われます。

 

一方で,会社からすると,たとえ社会的な要請であっても会社判断で就業制限を行おうとすると,休んでいる労働者に賃金を払わなければいけないので,こちらもまた,安易に就労制限やイベントの中止はしにくいと思われます。

 

ちなみに,法律業界はどうかというと,裁判所は今のところ通常営業といった感じです。

 

ただ,交通事故の和解あっせんを行う交通事故紛争処理センターでは,通常はセンターの嘱託弁護士・事故の被害者側・加害者側の三者が揃って出席するべきところを,しばらくの間,顔を会わせず電話会議で期日の進行を行うこととなりました。コロナウイルスの流行による特例の措置だそうです。

 

このような緊急事態だからこそ,柔軟な判断ができる社会に期待したいですね。