弁護士法人心は,突然の事故に遭ってしまった交通事故被害者の支援・救済のため,日々多くの交通事故案件を取り扱わせていただいております。
しかし,ニュースや裁判例を見ると,「悪意ある被害者」というものも,どうやら一定数存在するようです。
それが,交通事故の保険金の不正請求問題です。
注意喚起の上でも今回のブログで取り上げたいと思います。
1 問題となっている不正請求の一例
① 通院日数の水増し
保険金の不正請求で多く聞くケースが,通院日数の水増しです。
保険会社が算定する交通事故の慰謝料は,通院日数を考慮して決定されています。
そのため,被害者がもらう慰謝料を増やすために,整形外科や接骨院と結託して,通院日数を水増しして保険会社に請求するケースが存在します。
これは,治療を行ったことにして治療代を保険会社に請求しようと考える整形外科や接骨院の方から水増しを持ちかけられるケースもあるようです。
② 詐病
実際はもう回復しているのに,通院や休業を続けて補償を受け取ろうとするケースです。
③ 交通費の虚偽申告
タクシー代を除き,交通費は領収書等を提出しなくても経路等を申告すれば請求することが可能です。
これを悪用して,実際は自転車や自動車で通院したのに,公共交通機関を利用したとして運賃を請求するケースです。
④ 自作自演の事故
これはかなり極端なケースではあります。
たとえば,自損事故を起こした場合,運転手は事故を起こした本人なので,ケガをしても自賠責保険を使うことはできませんが,同乗者が怪我をした場合は,保険金の支払い対象となります。
そこで,運転手と同乗者とで共謀して,同乗者が事故で怪我をしたことにして保険金を請求しようとするケースがあります。
2 不正請求の取り締まりは強化されている
近年は,保険会社もこのような不正請求の取り締まりを強化しています。
たとえば,①のケースでは,不審に思った保険会社が探偵に依頼して整形外科の前に張り込みさせ,通院していないのに通院したものとして請求していたことが発覚したというケースが報じられました。
また,②のケースでは,体が痛くて仕事ができないと保険会社に話して休業補償をもらっていた被害者が,休日に元気にスポーツに興じているところをSNSに投稿して発覚したケースなどがありました。
不正請求は驚くほど簡単に発覚してしまうものです。
3 不正請求は犯罪です!
不正請求は,保険金を不正にだまし取ろうとするものであり,詐欺罪に該当します。最大で懲役10年という処罰が課せられることのある重大な犯罪です。
不正請求が発覚した場合,上記のような刑事処罰に処される可能性があり,また,治療費含め,保険会社から受け取った一切の金銭の返還を求められることもあります。
間違っても,不正請求に手を染めるようなことだけはしないでいただきたいと思います。