東京も梅雨入りとなり,カラッとしない天気が続きますね。
本日は,保険会社と揉めることも多い「評価損」についてお話したいと思います。
1 評価損とは
交通事故によって車両が損傷してしまった場合,修理しても事故車扱いとなり,下取り価格が安くなるとディーラーから言われることは少なくありません。
この車両の評価の低下という損害,いわゆる「評価損」について,加害者に賠償を求めることができる場合があります。
車両を修理しても機能や外観が元通りにならなかった場合は,車両の価値が下がっていることは明らかなので,評価損は認めてもらいやすい傾向にあります。
一方,修理した結果,元通りになったという場合,車両の客観的な価値は回復しているはずということになります(場合によっては,古い中古車の場合,部品を交換したらその部分は新品になるので,客観的な価値は上昇するのでは?とも考えられます)。
すると,ディーラーの下取り価格が安いのは,ディーラーの査定が客観的な価値と比べて不当なだけで,加害者がその下落分の賠償を負うべきなのかという問題もあるかと思います。
とはいえ,事故車扱いになった場合に中古市場価格が下がるのは社会通念化しているともいえ,裁判所や法律家は両者のバランス等も考え,主に次の3点を重視して,評価損を認めるかどうか判断する傾向にあります。
2 評価損の判断基準
① 修復歴がつく修理内容かどうか
車両のフレーム等重要部分が損傷し修理した場合,修復歴が付くことになります。この「修復歴」は単なる「事故歴」とは別概念ということになります。
単なる事故歴は表示する必要はないのに対し,修復歴の有無は,自動車業における表示に関する公正競争規約及び同中古車に関する施行規則15条に基づいて表示することになっており,この表示がある車両は,やはり中古市場においては取引価格が下がる傾向にあるので,評価損を認めてもらうための一つの材料となります。
② 新車購入後から交通事故に遭うまでの期間
新車と中古車とで比べると,新車の方が評価損を認めてくれやすい傾向にあります。
他方で,新車購入から1年以上たつと,評価損の認定率は下がる傾向にあります。
③ 車両の購入価格
外国車や国産高級車など,購入金額が大きい方が評価損が認められやすい傾向にあります。
3 評価損として認められる金額
評価損を金銭的に換算するのは困難なことが多く,裁判例では,修理代の10~30%程度の範疇で認める傾向が強いといえます。
単純に下取り価格の減少分をそのまま認めることはほぼないといえます。
評価損については,認められるかどうか,認められるとしてもいくらぐらいが妥当な金額なのかは難しい問題が多いので,一度弁護士に相談してみることをおすすめします。