驚くべき詐欺の手口

ここ最近、自己破産のご相談をおうかがいしていると、詐欺にあって借金を背負うことになった方や、お金に困って怪しいバイトに応募したところ、結果的に詐欺に加担することになってしまったという方がかなりいらっしゃいます。


私は詐欺被害や消費者被害を専門分野にしている弁護士ではないのですが、こういった相談にのるうちに詐欺の手口にはだいぶ詳しくなってしまいました。


最近の詐欺の手口で驚いたのは、振込詐欺などに使われる入金先の銀行口座も、一般人を騙し、あるいは脅し取った口座が利用されているということです。


私の相談者の中に、闇金業者から借金をしていたという方がいらっしゃいました。


闇金業者の取り立ては次第に厳しくなっていき、あるとき、返済の猶予と引き換えに銀行口座の情報を提供するよう強く求められました。


「逃げない証拠として個人情報を渡せ」だとか「金が入ってもすぐ返済するのか信用できないから、こちらで口座を管理してすぐ回収できるようにする」などと言われたそうです。


その方は、執拗な取り立てから逃れたいという一心で、口座の情報を渡してしまいました。


すぐに口座の暗証番号は変更され、完全にアクセス権を奪われてしまいました。


そうしたところ、その銀行口座が振込詐欺の入金先口座に悪用されてしまったとのことでした。


破産手続のためにその口座の取引履歴を取り寄せたところ、口座が凍結されるまでのわずか2日間で2000万円以上の入金記録がありました。それだけの詐欺被害があったということです。


こういった銀行口座の情報を第三者に提供する行為も、詐欺罪の幇助や犯罪収益移転防止法違反と評価されてしまうおそれがあります。


また、詐欺の被害者から損害賠償請求を受けるおそれがあり、私が担当した案件でも実際に複数の被害者の方から損害賠償請求を起こされました。


もしも悪意で詐欺に加担したと評価されてしまうと、破産しても免責されず賠償責任が残り続けるおそれがあります。


また、せっかく借金から解放されても、刑事事件化した場合は生活再建の道が大きく挫かれるおそれもあります。


詐欺が絡むと破産事件としても非常に難易度があがることになります。


債務整理したら勤務先に借金がバレる?

弁護士に債務整理の依頼をした場合、借金をしていることが会社にバレないか心配だという方は多いのではないしょうか。


結論から言うと、弁護士が介入したことによって職場にバレるということは、基本的にはありません。


弁護士に債務整理を依頼した場合、弁護士は各債権者に受任通知(弁護士が介入する旨の連絡)を行います。


それ以降、金融業者が債務者本人や勤務先を含む関係者に対して連絡を行うことは、貸金業法により禁止されます。


そのため、勤務先に連絡されることが怖いのであれば、むしろ弁護士にご依頼いただいた方が安全であるといえます。


ただし、裁判所を通じて給料の差押えをすることまでは禁止できないので、注意が必要です(もっとも、差押えの危険があるほど切迫した状況であるならば、なおさら弁護士にご依頼・ご相談いただいた方がいいことが多いですが・・・)。


なお、債務整理する場合に直接勤務先に連絡が行くことは上記のとおりありませんが、間接的に影響が出たり、職場に協力をお願いしないといけない場面はございます。


たとえば、銀行系のカードローンの債務整理をする場合で、その銀行の口座が給料の振込先口座になっているような場合です。


銀行系のカードローンを債務整理すると、その銀行の口座が一時的に凍結されることがあります。


凍結されている間は入出金ができないので、会社が給与を振り込もうとしたらエラーになってしまうことがあり得ます。


このような場合に備えて、あらかじめ別の銀行の口座を給与の振込先に指定していただくなどの対策が必要になります。


また、個人再生や自己破産をする場合は、退職金の見込み額を裁判所に申告しないといけません。


そのため、勤務先には退職金証明書や退職金規定の写しを提供してもらう必要があります。


特に理由を聞かずに発行してくれる会社であればいいのですが、会社によっては何のために必要なのかを確認するところもあり、正直に「破産の手続きのために必要だ」とは言いにくいでしょうから、どう説明すればいいのか、悩ましい問題が生じることがあります。

今回ご紹介したもの以外にも、場合により勤務先が何らかの形で影響してくるケースもございますので、詳細は実際に弁護士にご相談いただければと思います。

信用情報機関

借金を繰り返しているうちに、自分がどこにいくら借りているか、何の料金が滞納しているのかがわからなくなってしまったという方が時々いらっしゃいます。


自分の借金の情報は信用情報機関に開示請求することで調査することができます。


有名な信用情報機関としては①CIC②全国銀行協会③JICCなどがあります。


CIC→https://www.cic.co.jp/

全国銀行協会→https://www.zenginkyo.or.jp/pcic/

JICC→https://www.jicc.co.jp/


信用情報の開示請求は本人で行うこともできますし、弁護士が調査を代行することもできます。


ただし、すべての借金や料金の滞納が信用情報機関に載っているとは限りません。


例えば、借金が債権回収業者に債権譲渡されてしまっている場合です。


債権回収業者の持っている債権は信用情報機関に登録されません。


元々債権を持っていた金融業者への登録も、譲渡後数年したら保有期限満了で消えることになります。


また、携帯電話の会社に対する料金の滞納は、携帯電話本体の分割払いを滞納した場合は信用情報に載りますが、毎月の通信料を滞納した場合は信用情報に載らないなどの取り扱いの違いがあります。


特に自己破産をする場合などに債権者に漏れがあったりすると、破産しても借金が残ってしまう場合があります。


弁護士に借金の相談をしようと考えている方は、信用情報のチェックの他に、自宅に届いている郵便物に督促状はないかなどをあらかじめ確認の上お問い合わせいただけると、スムーズに相談することができるかと思います。


債務整理と弁護士の直接面談義務

弁護士が債務整理の案件をご依頼いただく際には、日弁連が定める「債務整理事件処理の規律を定める規程」に従って案件を処理しなければいけません。


そこで課せられている義務のひとつに、弁護士の直接面談義務というものがあります。


債務整理の案件を受任するときは、必ず弁護士が対面で依頼者とお会いして、契約内容や事件処理の流れ等を説明しないといけないというルールです。


そのため、当法人でも、ご依頼の際には必ず事務所にお越しいただき、弁護士からの説明を受けていただくことをお願いしております。


最近、このルールをめぐって、消費者金融大手4社が連名で「依頼者との直接面談や説明をしていないとみられる例が多数散見される」として、各弁護士への規程順守の徹底や違反者の処分を求める意見書が提出されたと報道されています。


確かに、当法人でも、一度別の事務所に依頼したが解約になってしまったり、契約中だが弁護士を変更したいという理由で当事務所に相談にいらっしゃるという方は少なくありませんが、その中には、前の事務所では上記の直接面談が行われていなかったというケースがちらほら見受けられます。


最近だと、前の弁護士とは依頼してから数年間一度も話したことはなく、解約の際に電話で話したのが最初で最後という方がいらっしゃいました。


その方は、前の弁護士に自己破産の手続を依頼していたのですが、その最中にお金に困って勤務先からお金を借りて給料天引きという形で返済していたところ、それが免責不許可事由に該当するので引き受けられないと言われて、契約を打ち切られてしまったとのことでした。


正直なところ、前の弁護士が直接面談を行いちゃんと注意事項を説明していればこのようなことにはならずに済んだのでないだろうか、その結果契約を打ち切ってしまうというのは無責任ではないかと思ってしまいます。


債務整理を弁護士にご依頼いただく際には、弁護士と直接しっかりお話しして、信頼できると思った弁護士にご依頼いただければと思います。


借金を任意整理した場合の返済期間

債務整理の手段のひとつに任意整理があります。


任意整理は、弁護士が各債権者と個別に交渉して毎月の返済金額や返済期間を決めて、その合意に従って完済を目指して支払っていくものです。


裁判所に申し立てを行う必要がない点で、個人再生や自己破産と比べて手続的な負担が軽く、裁判所による指示・制約がないため比較的自由度が高いという特徴があります。


他方で、あくまで裁判所外の手続であるため、強制力はありません。


そのため、借り入れ状況などによっては、応じてもらえる返済期間などが変わってくる場合があります。


一般的には、将来発生する利息を免除してもらって、3~5年の分割期間で払っていくというのが一つの目安となります。


ただ、借り入れの期間が数カ月から1年程度と短い場合などでは、短期の分割払いを求められることがあります。


また、債務の総額が比較的少なく、長期の分割払いにすると毎月の返済額が極端に少なくなってしまうようなケースでは、毎月最低でも数千円程度は支払う内容にしてほしいと求めてくる業者もあります。


債権者によっては、「社内の取り決めで、そもそも〇〇回以上の分割を認めていない」という業者もあります。


逆に、債務者の状況を斟酌して、5年以上の長期の分割に柔軟に応じてくれるところもあります。


また、債権者の対応は必ずしも一定ではなく、経営状況などで変わってくることがあります。


最近だと、借りてすぐに任意整理や破産をする人が増えて利益が出なくなっていることを理由に、将来利息の全額カットを拒否する業者も現れ始めました(個人的には、貸し倒れが起きないように業者側も与信審査を行っているはずなのだから、無茶な貸し付けを行った業者側の責任だと思いますが)。


交渉に当たる弁護士がこのような業者の傾向を把握していないと、任意整理で進めるつもりだったのが短期の分割を求められ破産せざるを得なくなったり、逆に長期の分割に応じてくれる業者で任意整理でもいけるはずだったのに、不必要な破産での解決を勧めてしまったりと、依頼者の希望に添えない結果を招くことがあります。


そのため、債務整理は経験豊富な弁護士に依頼するのがおすすめです。


債務整理と銀行口座の凍結

債務整理を行うと、一定の場合に銀行の口座が凍結されてしまう場合があります。


銀行の口座が凍結されてしまうと、通常だと1~2ヶ月の間(永久に口座が使えなくなるわけではありません)口座が使えなくなり、口座に入金された給料が引き出せなくなってしまったり、その口座からの自動引き落としができなくなってしまいます。


また、凍結時に口座に預金が残っていた場合、その預金と借金が相殺されてしまいます。


このように、口座凍結による日常生活の支障は少なくありません。


もっとも、債務整理をするとあらゆる銀行口座が凍結されるわけではありません。 以下に口座凍結の条件などをまとめておきたいと思います。


①まず、あくまで任意整理をした銀行の口座が凍結されるのであって、他の銀行までもが凍結されることはありません。


たとえば、三井住友銀行の債務整理をした場合、三井住友銀行の口座は凍結される可能性はありますが、債務整理する銀行とは関係ないみずほ銀行などの口座が凍結されることはありません。


②また、銀行の系列業者のカードを債務整理しても、銀行口座が凍結されることはありません。


たとえば、「三井住友銀行」と「三井住友カード」、「楽天銀行」と「楽天カード」などは名称こそ似ていますがあくまで別会社なので、○○カードの方を債務整理しても、銀行の口座が凍結されることはありません。


③一方、同一銀行内だとすべての口座が凍結される可能性があります。


たとえば、三菱UFJ銀行の千葉支店と柏支店に口座を開設していた場合は、三菱UFJ銀行の債務整理をすると両方の口座が凍結されます。


④また、見落としがちですが、普通預金だけでなく定期預金も凍結の対象となり、借金と相殺されてしまいます。


口座凍結の影響を最小限に抑えるためには、事前にある程度の対策を行っておく必要があります。


具体的には、

・あらかじめ銀行口座に残っている預金を引き出しておく。
・給料等の振込先口座を別の口座に変更しておく。
・公共料金等の引き落とし口座を別の口座変更しておく。

などを行っていただくのが好ましいといえます。


住宅ローンと清算価値の問題

債務整理したいが住宅ローンの残っている自宅には変わらず住み続けたいという方にお勧めの手続のひとつに、個人再生という手続があります。

裁判所の認可を受けて借金の総額を圧縮しつつ、住宅ローンだけは「住宅資金特別条項」という制度を使うことで、自宅を残すことが可能です。

ただ、ケースによっては借金の総額の圧縮があまり期待できないケースがあります。

個人再生の場合、借金を圧縮できる金額は、債務者の有している財産の清算価値の金額が下限となります。

たとえば、借金が1000万円ある方が個人再生を利用する場合、本来は最大では200万円まで債務を圧縮できるのですが、もしこの方に500万円の清算価値を有する財産を持っているのであれば、最低でも500万円までは借金をはらわないといけないルールになっています。

この清算価値の問題は、不動産の価値に左右されることが多いです。

たとえば、不動産の価値が1500万円で、住宅ローンが2000万円残っており、ローンの金額が上回っている状態(オーバーローン)のケースだと、清算価値は0円になります。この場合は問題ありません。

一方で、不動産の価値は同じく1500万円だが、長年ローンを返済し続けており、住宅ローンの残りは1000万円まで減っていたというケースだと、清算価値は1500万円-1000万円=500万円という計算になります。

また、近年だと地価の上昇により不動産の価値が上がっており、いつの間にかローンの残額を上回っていたというケースもあります。

千葉県内でも、地域にもよりますが昨年比で10%近く地価が上がっているエリアもあるようです。

そういったケースだと、持ち家の不動産価格の上昇は本来うれしいことではあるのですが、個人再生の関係だと不利になってしまうことがあるので注意が必要です。

個人再生と履行可能性

債務整理の方法のひとつに、個人再生という手続があります。


裁判所の認可を受けて債務総額を減額してもらい、減額後の金額を3年から5年をかけて計画的に完済していくというものです。


破産と違って借金がゼロになるわけではないので、この手続が認められるためには、履行可能性(=借金を計画通りに返済できること)が必要です。


たとえば、家計が赤字で貯金を切り崩しながら生活しているような場合ですと、貯金が尽きれば返済も行き詰ってしまうのは明白なので、履行可能性が認められないと判断されてしまう可能性が高いです。


個人再生の手続では、家計表や給与明細、銀行口座の取引履歴などの提出が求められますが、これらは裁判所が収支をチェックし履行可能性があるかどうかを判断するための材料となります。


裁判所は現在の状況や過去の実績を重視するので、「これから副業を始めるので収入はもっと増える見込みだ」とか、「節約に努めて出費を減らします」といった不確定な話はなかなか通用しません。


裁判所への申立てに先立って、事前にしっかり準備する必要があります。


なお、履行可能性の判断については裁判所によって考え方に多少の違いがあるようですが、私が在籍する柏事務所の管轄である千葉地方裁判所松戸支部の場合だと、月々の恒常的な生活費に加えて2~3万円程度の余剰がないと、履行可能性について疑問ありと指摘される傾向にあります。


月々の収支がプラスマイナスゼロで一切貯金ができないような状態だと、臨時の出費や税金の支払いがあった場合に生計が成り立たなくなってしまうおそれがあるからです。


ギャンブルによる借金でも破産できるのか

破産の相談で、「借金の原因がギャンブルなので、破産はできないのではないか?」という質問をされることが結構あります。


破産には「免責不許可事由」というものがあります。


これに該当してしまうと、免責、つまり借金を帳消しにしてもらうことはできなくなってしまいます。


破産法252条1項には、いかなる行為が免責不許可事由に該当するかについて列挙されています。


そのひとつに「浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。」というのがあります。


これだけ見ると、まさしく「賭博(=ギャンブル)」による借金は、免責が認められないと読めます。


ですが、すべてのギャンブルがこの免責不許可事由にあたるかというと、実はそうとは限りません。


たとえば、毎月1万円程度と予算を決めてその中でギャンブルを楽しんでいたような場合は、「賭博」ではあるけども「著しく財産を減少させ」たとはいえないとして、免責不許可事由には該当しないと主張する余地があります。


また、破産法には裁量免責という規定があります。


252条2項には「同項各号(※上述の252条1項)に掲げる事由のいずれかに該当する場合であっても、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる」とあります。


要するに、「免責不許可事由があっても、事情次第では免責を認めることがあるよ」ということです。


上記のように「そもそも免責不許事由にはあたらない」とか「仮に免責不許可事由に該当するとしても、これこれこういう事情があるから裁量免責が認められるべき」と主張して免責を認めさせることが、ある意味で破産を扱う弁護士の腕の見せ所であるともいえます。


ですので、後ろめたい気持ちもあるかもしれませんが、もしギャンブル等での借金がある場合には、相談の際には隠さず弁護士にはお伝えいただければと思います。意外となんとかなったりします。


詐欺破産罪


つい先日、ある破産者が「詐欺破産」の罪で逮捕されたというニュースが報道されました。



詐欺破産とは、債権者を害する目的で、財産を隠匿するなどして破産手続を取る行為で、10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金という非常に重い犯罪です(破産法265条)。



本来、自己破産する場合には、破産者は一定の財産を除いては、所有する財産を清算して債権者に分配しないといけません。



しかし、ニュースの件では、破産者は破産直前に時価約600万円の暗号資産を海外の口座に移し、それを破産手続の際に申告しないで分配を免れようとしたようです。



自己破産の際には、裁判所から給与明細や源泉徴収票、保有している口座の通帳の写しなど、多くの資料の提出が求められます。



その目的のひとつが、裁判所が破産者のお金の流れを調査し、今回の件のような財産隠しをしていないかを確かめることにあります。



このニュースの件では、破産者が暗号資産の存在は隠したが、その他の資料を照合した結果、不自然なお金の動きを裁判所が見抜いたものと思われます。



破産の際に提出する資料はこのように大きな意味を持ちます。



そのため、資料に不足があったり、内容に不自然な点があってきちんと説明ができなかったりすると、詐欺破産を疑われるというレベルまでは行かないにしても、破産の可否に影響を及ぼす可能性もあります。



破産の申立を行う場合に、資料に不足はないか、不自然な点はないかのチェックは、弁護士が最も多くの時間と労力を費やすところのひとつといえます。


会社代表者の破産


コロナの影響でしょうか、最近、会社を経営していた方からの破産の相談がちらほら寄せられています。



会社といっても、多くのケースは個人事業主が事業を法人化した一人会社というケースが多いです(従業員を何十人も雇っている会社は多くが顧問弁護士をつけているでしょうから、そういった会社はその顧問弁護士に破産手続も頼むのでしょう)。



千葉を含む多くの裁判所は、このような会社代表者個人が破産するケースでは、小規模な会社であっても、同時に破産を申し立てるよう要請されることが通常です。



形式的には、会社と個人は別人格ではあります。



ただ、もし会社代表者が破産してしまうと、法律上、破産開始決定により、会社代表者の地位を失うことになります。



そうすると、会社が動いているケースはもちろん、動いていない場合であっても代表者不在の法人の清算や管理は誰がするのかという問題が生じてしまいます。



そのため、会社と代表者は同時に破産を申し立てる必要があります。



破産申し立てをする場合、破産者の住所地の管轄の裁判所に申し立てる必要がありますが、個人の住所と会社の住所とが異なっている場合でも、同じ地方裁判所に申し立てることができます。



また、会社の破産が絡む場合は、原則として管財事件となり、そのための予納金を裁判所に納める必要がありますが、同時に申し立てることで予納金は1件分で済みます。



会社破産(法人破産)は個人の破産と比べて手続や用意すべき資料などが一層複雑になるため、弁護士に相談することをおすすめします。


時効の援用と信用情報

新規でローンを組もうと思ったり,クレジットカードを作ろうと思ったら審査が下りず,信用情報を調べたら,過去の借金の滞納の記録が残っていたという相談を受けることがあります。


さらに,滞納は5年以上前で,「5年で時効となり消えないのか」とか「信用情報の保有期間は5年と聞いたが,なぜまだ残っているのか」といった質問を受けることがあります。


そこで今回は時効の援用と信用情報についてお話ししたいと思います。


まず,時効の援用についてですが,借金は最終取引から5年を経過することで時効となります。


ただし,5年経過すれば自動的に消滅するのではなく,債務者から債権者に対して時効により消滅させるという主張を通知する必要があります。


一方,信用情報についてですが,信用情報機関によって保有期間は異なるものの,短いところだと1年程度,長いところだと5年程度記録を残すという運用となっています。


この保有期間については,借金が完済された場合や,消費者金融から債権回収業者に譲渡された場合の情報は,上記の保有期間で削除されることになります。


しかし,返済を継続している場合や,返済しないまま滞納になっている場合は,保有期間のカウントが開始することなく記録は残り続けることとなります。


つまり,借金の処理をしない限り,具体的には時効の援用をしない限りは,たとえ5年以上前の借金であっても,信用情報には残り続けることとなります。


時効の援用を行った場合,正確には信用情報から直ちに削除されるのではなく,信用情報の記載が「異動(滞納)」から「完了」に訂正・変更されます。


この時点で,滞納扱いから完済と変わらない状態に変更されることが一般的です。


その後,完了になってから保有期間が経過されれば,信用情報は完全に削除されることとなります。


過去の借金についての清算を考えている方は,弁護士に相談してみるとよいでしょう。