一昨年の夏ごろ、国が2025年に障害年金制度の改正を検討しているとの報道がありました。
障害厚生年金の支給要件緩和、具体的には、初診日当時厚生年金に加入していなかった人でも、厚生年金の加入期間が一定以上ある場合や、退職から短期間の場合には、障害厚生年金の支給を認めるといった案が検討されているとのことです。
この報道を受けて、障害年金のご相談にいらっしゃった方から「2025年に障害年金制度の改正が予定されているらしいが、それまで申請を待った方が有利なのか?」というご質問をうけることが時々ございます。
この障害年金制度改正については、2023年6月26日の社会保険審査会年金部会で議論されています。
(議事録→https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_0626.html)
ただ、公開されている資料を見る限りは、それ以降の続報はありません。
水面下では動いているのかもしれないですが、果たして本当に2025年に制度改正が実現するのか、それとも検討止まりで終わってしまうのかはまだわかりません。
また、2023年6月の議事録を見ていくと、改正を推進する方向で問題提起している委員の方も「反対意見も当然に考えられる」と述べられており、別の委員からは、実際に改正への慎重意見が述べられています。
論点のひとつである、退職後に厚生年金を脱退した後に初診日があると基礎年金しかもらえないという問題についても、委員の1人からは厚生年金の任意継続の導入による解決という案も出ているようですが、これは報道されている延長保護的な解決案と比べるとだいぶ後退した内容となります。
このように、障害年金制度改革はまだ賛否両論のあるまさしく「検討段階」であり、報道されているような内容でそっくりそのまま着地するかどうかは未知数と言えそうです。
また、上記の議論は障害者にとって有利な方向での制度見直しの議論でしたが、一方で、納付要件に関するいわゆる直近1年要件の廃止など、申請する人にとっては不利な方向での制度見直しも検討対象とされています。
そのため、新制度を待ってからの申請が逆に不利に働く場面もあり得るかもしれません。
このような現状を踏まえると、冒頭の「障害年金制度の改正を待って申請した方がいいのか?」というご質問に対して私が回答するとしたら、「実際にどのような制度になるのか、本当に2025年に実現するのかは、私は政治家でないからわからない。弁護士の立場からは、今ある制度でどのような形で申請をするのがベストかをアドバイスさせていただきたい。」としか答えられないのかなと思います。
障害年金制度改革は、本当に実現されるようなら大きなトピックになるので、今後も動向を注視していきたいと思います。