葬儀費用を亡くなった方のお金で支払ったら相続放棄できないのか?

弁護士法人心では相続のご相談を広く取り扱っており、私はその中でも相続放棄のご相談などを対応させていただいております。


この相続放棄という手続きについて、某NHKの朝の情報番組で取り上げられたそうで、SNSでもトレンドに上がるなど話題になっていたようです。


その番組の中で、「亡くなった人のお金で葬儀費用を支払った場合は相続放棄ができなくなる」という説明があったようです。


しかしながら、この説明は必ずしも正確ではないといえます。


故人の遺産から葬儀費用を支払った場合でも、相続放棄は認められるケースはあります。


たとえば、裁判例では以下のように判示して、葬儀費用を遺産で支払った人の相続放棄を認めています。



大阪高裁平成14年7月3日決定

「葬儀は、人生最後の儀式として執り行われるものであり、社会的儀式として必要性が高いものである。そして、その時期を予想することは困難であり、葬儀を執り行うためには、必ず相当額の支出を伴うものである。

これらの点からすれば、被相続人に相続財産があるときは、それをもって被相続人の葬儀費用に充当しても社会的見地から不当なものとはいえない。

また、相続財産があるにもかかわらず、これを使用することが許されず、相続人らに資力がないため被相続人の葬儀を執り行うことができないとすれば、むしろ非常識な結果といわざるを得ないものである。

したがって、相続財産から葬儀費用を支出する行為は、法定単純承認たる「相続財産の処分」(民法921条1号)には当たらないというべきである。」


また、上記裁判例のケースでは、葬儀費用の他に仏壇や墓石の購入費用も遺産から支出していましたが、結論として相続放棄を認めています。


もっとも、葬儀費用であればありとあらゆるケースで相続放棄が認められるとは限りません。


たとえば、葬儀があまりに華美であったために葬儀費用も高額になった場合などは、社会的見地から見ていくらなんでも不相当であるから相続放棄は認めないという結論もあり得ると思われます。


また、35日や49日、さらには1周忌の法要などは、上記裁判例でいうところの「その時期を予想することは困難」とはいえないでしょうから、祭祀の主催者が費用を負担すべきであり、故人の財産を使ってはいけないという結論になろうかと思います。


結局のところはケースバイケースであるため、相続放棄を考えている方は弁護士に相談いただくのが望ましいかと思います。


続・障害年金制度改正

令和6年7月30日、厚生労働省・社会保障審議会年金部会が開催され、障害年金制度の改正についての審議がありました。議事録も公開されています。

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_20240903.html


このブログでも以前に来年に障害年金の改正の動きがあるかもしれないとお知らせしましたが、その続報ということになります。


議事録を見る限りですと、受給資格の緩和(いわゆる「直近1年要件」)は引き続き10年間延長される方向で固まったようです。


これは障害年金の受給を目指す方にとっては有利な運用が継続されるものであり、朗報といえます。


一方、障害厚生年金の初診日要件の緩和や事後重症請求の受給権の発生時期の柔軟化、障害年金受給者が年金保険料の法定免除を選択した場合の取り扱いといったそれ以外の制度見直しについては、引き続き審議継続という扱いになるようです。


そのため、次の改正で直ちに大きな制度変革が盛り込まれる機運は下がったと見ることができます。


事実上、障害年金制度に関しては次回改正では現状維持ということになりそうです。


全般的には障害者の救済拡大の方向で議論が進んでいる印象ですが、実際に制度改正が実現するのはまだまだ時間がかかるような気がします。


法改正や制度運用の見直しは弁護士ではなく政治家や行政の仕事に属するといえますが、障害年金に携わる専門家としていい方向に進むことを願っています。


驚くべき詐欺の手口

ここ最近、自己破産のご相談をおうかがいしていると、詐欺にあって借金を背負うことになった方や、お金に困って怪しいバイトに応募したところ、結果的に詐欺に加担することになってしまったという方がかなりいらっしゃいます。


私は詐欺被害や消費者被害を専門分野にしている弁護士ではないのですが、こういった相談にのるうちに詐欺の手口にはだいぶ詳しくなってしまいました。


最近の詐欺の手口で驚いたのは、振込詐欺などに使われる入金先の銀行口座も、一般人を騙し、あるいは脅し取った口座が利用されているということです。


私の相談者の中に、闇金業者から借金をしていたという方がいらっしゃいました。


闇金業者の取り立ては次第に厳しくなっていき、あるとき、返済の猶予と引き換えに銀行口座の情報を提供するよう強く求められました。


「逃げない証拠として個人情報を渡せ」だとか「金が入ってもすぐ返済するのか信用できないから、こちらで口座を管理してすぐ回収できるようにする」などと言われたそうです。


その方は、執拗な取り立てから逃れたいという一心で、口座の情報を渡してしまいました。


すぐに口座の暗証番号は変更され、完全にアクセス権を奪われてしまいました。


そうしたところ、その銀行口座が振込詐欺の入金先口座に悪用されてしまったとのことでした。


破産手続のためにその口座の取引履歴を取り寄せたところ、口座が凍結されるまでのわずか2日間で2000万円以上の入金記録がありました。それだけの詐欺被害があったということです。


こういった銀行口座の情報を第三者に提供する行為も、詐欺罪の幇助や犯罪収益移転防止法違反と評価されてしまうおそれがあります。


また、詐欺の被害者から損害賠償請求を受けるおそれがあり、私が担当した案件でも実際に複数の被害者の方から損害賠償請求を起こされました。


もしも悪意で詐欺に加担したと評価されてしまうと、破産しても免責されず賠償責任が残り続けるおそれがあります。


また、せっかく借金から解放されても、刑事事件化した場合は生活再建の道が大きく挫かれるおそれもあります。


詐欺が絡むと破産事件としても非常に難易度があがることになります。


債務整理したら勤務先に借金がバレる?

弁護士に債務整理の依頼をした場合、借金をしていることが会社にバレないか心配だという方は多いのではないしょうか。


結論から言うと、弁護士が介入したことによって職場にバレるということは、基本的にはありません。


弁護士に債務整理を依頼した場合、弁護士は各債権者に受任通知(弁護士が介入する旨の連絡)を行います。


それ以降、金融業者が債務者本人や勤務先を含む関係者に対して連絡を行うことは、貸金業法により禁止されます。


そのため、勤務先に連絡されることが怖いのであれば、むしろ弁護士にご依頼いただいた方が安全であるといえます。


ただし、裁判所を通じて給料の差押えをすることまでは禁止できないので、注意が必要です(もっとも、差押えの危険があるほど切迫した状況であるならば、なおさら弁護士にご依頼・ご相談いただいた方がいいことが多いですが・・・)。


なお、債務整理する場合に直接勤務先に連絡が行くことは上記のとおりありませんが、間接的に影響が出たり、職場に協力をお願いしないといけない場面はございます。


たとえば、銀行系のカードローンの債務整理をする場合で、その銀行の口座が給料の振込先口座になっているような場合です。


銀行系のカードローンを債務整理すると、その銀行の口座が一時的に凍結されることがあります。


凍結されている間は入出金ができないので、会社が給与を振り込もうとしたらエラーになってしまうことがあり得ます。


このような場合に備えて、あらかじめ別の銀行の口座を給与の振込先に指定していただくなどの対策が必要になります。


また、個人再生や自己破産をする場合は、退職金の見込み額を裁判所に申告しないといけません。


そのため、勤務先には退職金証明書や退職金規定の写しを提供してもらう必要があります。


特に理由を聞かずに発行してくれる会社であればいいのですが、会社によっては何のために必要なのかを確認するところもあり、正直に「破産の手続きのために必要だ」とは言いにくいでしょうから、どう説明すればいいのか、悩ましい問題が生じることがあります。

今回ご紹介したもの以外にも、場合により勤務先が何らかの形で影響してくるケースもございますので、詳細は実際に弁護士にご相談いただければと思います。

信用情報機関

借金を繰り返しているうちに、自分がどこにいくら借りているか、何の料金が滞納しているのかがわからなくなってしまったという方が時々いらっしゃいます。


自分の借金の情報は信用情報機関に開示請求することで調査することができます。


有名な信用情報機関としては①CIC②全国銀行協会③JICCなどがあります。


CIC→https://www.cic.co.jp/

全国銀行協会→https://www.zenginkyo.or.jp/pcic/

JICC→https://www.jicc.co.jp/


信用情報の開示請求は本人で行うこともできますし、弁護士が調査を代行することもできます。


ただし、すべての借金や料金の滞納が信用情報機関に載っているとは限りません。


例えば、借金が債権回収業者に債権譲渡されてしまっている場合です。


債権回収業者の持っている債権は信用情報機関に登録されません。


元々債権を持っていた金融業者への登録も、譲渡後数年したら保有期限満了で消えることになります。


また、携帯電話の会社に対する料金の滞納は、携帯電話本体の分割払いを滞納した場合は信用情報に載りますが、毎月の通信料を滞納した場合は信用情報に載らないなどの取り扱いの違いがあります。


特に自己破産をする場合などに債権者に漏れがあったりすると、破産しても借金が残ってしまう場合があります。


弁護士に借金の相談をしようと考えている方は、信用情報のチェックの他に、自宅に届いている郵便物に督促状はないかなどをあらかじめ確認の上お問い合わせいただけると、スムーズに相談することができるかと思います。


2025年障害年金制度の改正?

一昨年の夏ごろ、国が2025年に障害年金制度の改正を検討しているとの報道がありました。


障害厚生年金の支給要件緩和、具体的には、初診日当時厚生年金に加入していなかった人でも、厚生年金の加入期間が一定以上ある場合や、退職から短期間の場合には、障害厚生年金の支給を認めるといった案が検討されているとのことです。


この報道を受けて、障害年金のご相談にいらっしゃった方から「2025年に障害年金制度の改正が予定されているらしいが、それまで申請を待った方が有利なのか?」というご質問をうけることが時々ございます。


この障害年金制度改正については、2023年6月26日の社会保険審査会年金部会で議論されています。

(議事録→https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_0626.html


ただ、公開されている資料を見る限りは、それ以降の続報はありません。


水面下では動いているのかもしれないですが、果たして本当に2025年に制度改正が実現するのか、それとも検討止まりで終わってしまうのかはまだわかりません。


また、2023年6月の議事録を見ていくと、改正を推進する方向で問題提起している委員の方も「反対意見も当然に考えられる」と述べられており、別の委員からは、実際に改正への慎重意見が述べられています。


論点のひとつである、退職後に厚生年金を脱退した後に初診日があると基礎年金しかもらえないという問題についても、委員の1人からは厚生年金の任意継続の導入による解決という案も出ているようですが、これは報道されている延長保護的な解決案と比べるとだいぶ後退した内容となります。


このように、障害年金制度改革はまだ賛否両論のあるまさしく「検討段階」であり、報道されているような内容でそっくりそのまま着地するかどうかは未知数と言えそうです。


また、上記の議論は障害者にとって有利な方向での制度見直しの議論でしたが、一方で、納付要件に関するいわゆる直近1年要件の廃止など、申請する人にとっては不利な方向での制度見直しも検討対象とされています。


そのため、新制度を待ってからの申請が逆に不利に働く場面もあり得るかもしれません。


このような現状を踏まえると、冒頭の「障害年金制度の改正を待って申請した方がいいのか?」というご質問に対して私が回答するとしたら、「実際にどのような制度になるのか、本当に2025年に実現するのかは、私は政治家でないからわからない。弁護士の立場からは、今ある制度でどのような形で申請をするのがベストかをアドバイスさせていただきたい。」としか答えられないのかなと思います。

障害年金制度改革は、本当に実現されるようなら大きなトピックになるので、今後も動向を注視していきたいと思います。

債務整理と弁護士の直接面談義務

弁護士が債務整理の案件をご依頼いただく際には、日弁連が定める「債務整理事件処理の規律を定める規程」に従って案件を処理しなければいけません。


そこで課せられている義務のひとつに、弁護士の直接面談義務というものがあります。


債務整理の案件を受任するときは、必ず弁護士が対面で依頼者とお会いして、契約内容や事件処理の流れ等を説明しないといけないというルールです。


そのため、当法人でも、ご依頼の際には必ず事務所にお越しいただき、弁護士からの説明を受けていただくことをお願いしております。


最近、このルールをめぐって、消費者金融大手4社が連名で「依頼者との直接面談や説明をしていないとみられる例が多数散見される」として、各弁護士への規程順守の徹底や違反者の処分を求める意見書が提出されたと報道されています。


確かに、当法人でも、一度別の事務所に依頼したが解約になってしまったり、契約中だが弁護士を変更したいという理由で当事務所に相談にいらっしゃるという方は少なくありませんが、その中には、前の事務所では上記の直接面談が行われていなかったというケースがちらほら見受けられます。


最近だと、前の弁護士とは依頼してから数年間一度も話したことはなく、解約の際に電話で話したのが最初で最後という方がいらっしゃいました。


その方は、前の弁護士に自己破産の手続を依頼していたのですが、その最中にお金に困って勤務先からお金を借りて給料天引きという形で返済していたところ、それが免責不許可事由に該当するので引き受けられないと言われて、契約を打ち切られてしまったとのことでした。


正直なところ、前の弁護士が直接面談を行いちゃんと注意事項を説明していればこのようなことにはならずに済んだのでないだろうか、その結果契約を打ち切ってしまうというのは無責任ではないかと思ってしまいます。


債務整理を弁護士にご依頼いただく際には、弁護士と直接しっかりお話しして、信頼できると思った弁護士にご依頼いただければと思います。


年金機構の判断でも覆せることがある

前回のブログで、傷病名を知的障害で申請したのに、年金機構が初診日を出生日と認めてもらえなかったケースをご紹介しました。


今回はその続きです。


もし年金機構の判断を受け入れると、遡及請求が不可能になってしまい、最大400万円近くを諦めなければいけません。


そのため、この年金機構の判断を覆す必要がありました。


とはいっても、やみくもに反論しても年金機構には通用しませんので、しっかり理屈と根拠を示して反論しないといけません。


このケースの難点は、申立人が知的障害だと判断された根拠が、50歳を過ぎてからの知能検査しかないというのが弱みでした。


これだけだと「50歳時点で知能指数が低下していることはわかるが、それが先天的なものだったのか、それとも統合失調症発症以降の後天的なものだったのかは断定できない」というのが、年金機構の理屈です。


そこで、依頼者からあらためて事情を聴き取り、初診の病院に限らず、精神科や心療内科の通院歴はないかを確認しました。


そうしたところ、成人後から現在までの30年間で、いくつか通院していた時期があることがわかりました。


それらの病院に何か手掛かりはないかを調べるため、各病院のカルテの開示請求を行いました。


その結果、その中のひとつの病院のカルテに、医師が「依頼者の症状は、統合失調症ではなく先天的な知的障害が原因ではないか」と疑う記載を見つけることができました。


さっそく、このカルテを追加資料で提出するとともに、「診断書を書いた主治医以外にも知的障害が原因だと指摘する医師がいる。実際に依頼者を診察した複数の医師の意見が一致しているのだから、先天的な知的障害の存在を認めるべきだ」という意見書も提出しました。


しばらくして年金事務所の判断は覆り、無事に知的障害の存在を認めてもらうことができました。


このケースのように、年金機構の判断であっても、代理人の弁護士の取り組み次第ではその判断を覆せるケースは存在し、それにより大きく支給金額が変わってくることがあります。


知的障害の初診日・認定日について

障害年金の初診日と認定日にはいくつかのルールがあります。


その中のひとつに「知的障害の初診日は出生日であり、認定日は20歳の成人時である。」というルールがあります(以前のブログでも簡単に紹介させていただいています)。


しかし、知的障害の診断名と知能検査の結果さえあれば、直ちに上記のような運用になるわけではないというケースを紹介します。


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問題になったケースは、50歳を過ぎてから知的障害での障害年金の申請にチャレンジしたケースでした。


この方は、19歳の頃に初めて精神的な症状を訴えて病院に行きました。


しかし、このときは知能検査を受けたという記録はなく、傷病名も「統合失調症」との診断を受けていました。


また、このときは1年足らずで通院を辞めていました。


もしこの統合失調症の傷病名で申請すると、遡及請求をすることは不可能です(統合失調症で遡及請求をするためには初診日の1年半後の状態が記載された診断書が必要になるのですが、今回のケースではその頃には通院をすでに辞めていたため)。


一方で、この依頼者のケースでは、幼少期のエピソードなどから、先天的な知的障害の可能性が疑われました。


もし知的障害の傷病名で申請できれば、上記のとおり、初診日は出生日、認定日は20歳の成人時になり、その頃ならまだ通院していたので、当時の診断書を作成してもらうことで遡及請求ができる余地がありました。そして、もしこれが認められれば遡って400万円近くを受給できる可能性がありました。


そこで、50歳を過ぎてからではありますが知能検査を実施したところ、知能指数の低下が確認され、重度の知的障害と診断されました。


主治医の協力もあり、障害年金の診断書も知的障害の傷病名で書いてもらうことができ、さらに20歳の頃の状態を記載した診断書も作成してもらうことができました。


これで、遡及請求のための書類は整ったはず・・・でした。


しかし、実際に申請を出してみると、年金機構から待ったがかかりました。


年金機構の判断は「知的障害での遡及請求は認められない」というもので、理由を要約すると「検査で判明した知能低下は統合失調症の影響であり、先天的な知的障害があったとは認められない。したがって、初診日は統合失調症で初めて病院に行った日である。」というものでした。


確かに、医学的には、統合失調症患者の多くは知能指数の低下が認められるという研究結果もあるようです。


さらにこの依頼者の場合、上記のとおり知能検査を受けたのは50歳を超えてからでした。


そのため、年金機構が「この知能検査の結果だけでは生まれつき知的障害があったという証明にはならない」と判断したのも、理解できなくはありません。


このケースのように、年金機構の審査は実質的な内容にまで及んでおり、その審査結果によっては、いわゆる教科書的なルールとは違った判断が下ることがあります。


さて、このまま年金機構の判断に従うと、遡及請求は不可能となり、最大400万円近くを諦めなければいけません。


年金機構が判断したのだからもう仕方ないのではと思ってしまうかもしれません。しかし、ある意味ではここからが弁護士の腕の見せ所といえます。


長くなりましたので、次回のブログにて私がこの事態にどう対応したのか、その結果はどうだったのかをご紹介したいと思います。


借金を任意整理した場合の返済期間

債務整理の手段のひとつに任意整理があります。


任意整理は、弁護士が各債権者と個別に交渉して毎月の返済金額や返済期間を決めて、その合意に従って完済を目指して支払っていくものです。


裁判所に申し立てを行う必要がない点で、個人再生や自己破産と比べて手続的な負担が軽く、裁判所による指示・制約がないため比較的自由度が高いという特徴があります。


他方で、あくまで裁判所外の手続であるため、強制力はありません。


そのため、借り入れ状況などによっては、応じてもらえる返済期間などが変わってくる場合があります。


一般的には、将来発生する利息を免除してもらって、3~5年の分割期間で払っていくというのが一つの目安となります。


ただ、借り入れの期間が数カ月から1年程度と短い場合などでは、短期の分割払いを求められることがあります。


また、債務の総額が比較的少なく、長期の分割払いにすると毎月の返済額が極端に少なくなってしまうようなケースでは、毎月最低でも数千円程度は支払う内容にしてほしいと求めてくる業者もあります。


債権者によっては、「社内の取り決めで、そもそも〇〇回以上の分割を認めていない」という業者もあります。


逆に、債務者の状況を斟酌して、5年以上の長期の分割に柔軟に応じてくれるところもあります。


また、債権者の対応は必ずしも一定ではなく、経営状況などで変わってくることがあります。


最近だと、借りてすぐに任意整理や破産をする人が増えて利益が出なくなっていることを理由に、将来利息の全額カットを拒否する業者も現れ始めました(個人的には、貸し倒れが起きないように業者側も与信審査を行っているはずなのだから、無茶な貸し付けを行った業者側の責任だと思いますが)。


交渉に当たる弁護士がこのような業者の傾向を把握していないと、任意整理で進めるつもりだったのが短期の分割を求められ破産せざるを得なくなったり、逆に長期の分割に応じてくれる業者で任意整理でもいけるはずだったのに、不必要な破産での解決を勧めてしまったりと、依頼者の希望に添えない結果を招くことがあります。


そのため、債務整理は経験豊富な弁護士に依頼するのがおすすめです。


弁護士法人心・船橋法律事務所がオープン

令和6年1月、千葉県船橋市に、弁護士法人心・船橋法律事務所が新たにオープンしました。


千葉県内では、千葉、柏に続いて3つ目の事務所になり、全国では17つ目の事務所になります。


事務所の最寄り駅である船橋駅・東海神駅は都内にも一本でアクセスできる場所にあります。船橋市の方を始め、より多くの方のお役に立てればと思います。



ところで、これら船橋事務所・千葉事務所・柏事務所は、裁判所の「管轄」が少しずつ異なります。


管轄とは、どこの裁判所が、どのような範囲で、どのような事件を扱うかを定めたルールです。


千葉事務所のある千葉市には、千葉地方・家庭裁判所があり、「本庁」と呼ばれています。


一方、柏事務所のある柏市は、松戸市にある千葉地方・家庭裁判所松戸支部の管轄にあります。


そして、今回新たにオープンした船橋事務所のある船橋市は、市川市にある千葉家庭裁判所市川出張所、市川簡易裁判所の管轄が及びます。


これを見ると、「地方」裁判所だったり「簡易」裁判所だったり、あるいは「支部」だとか「出張所」だとか、微妙に違いがあるのに気付いたかもしれません。


「簡易」裁判所は地方裁判所と比べて取り扱える事件に制限があり、訴額が140万円を超える事件は取り扱うことができません。


「支部」は概ね通常の地方・家庭裁判所と同様の役割を果たしますが、本庁とは違って行政訴訟や民事控訴事件を扱うことはできません。


「出張所」は、家事審判法に基づく調停及び審判のみを取り扱います。


船橋事務所が管轄に属する市川の裁判所の場合、簡易裁判所のみがあり地方裁判所の機能はありません。


そのため、訴額140万円を超える事件は本庁である千葉地方裁判所に提起する必要があります。


一方、家事事件は家庭裁判所の出張所があるので、市川の裁判所で取り扱ってもらうことができます。


債務整理と銀行口座の凍結

債務整理を行うと、一定の場合に銀行の口座が凍結されてしまう場合があります。


銀行の口座が凍結されてしまうと、通常だと1~2ヶ月の間(永久に口座が使えなくなるわけではありません)口座が使えなくなり、口座に入金された給料が引き出せなくなってしまったり、その口座からの自動引き落としができなくなってしまいます。


また、凍結時に口座に預金が残っていた場合、その預金と借金が相殺されてしまいます。


このように、口座凍結による日常生活の支障は少なくありません。


もっとも、債務整理をするとあらゆる銀行口座が凍結されるわけではありません。 以下に口座凍結の条件などをまとめておきたいと思います。


①まず、あくまで任意整理をした銀行の口座が凍結されるのであって、他の銀行までもが凍結されることはありません。


たとえば、三井住友銀行の債務整理をした場合、三井住友銀行の口座は凍結される可能性はありますが、債務整理する銀行とは関係ないみずほ銀行などの口座が凍結されることはありません。


②また、銀行の系列業者のカードを債務整理しても、銀行口座が凍結されることはありません。


たとえば、「三井住友銀行」と「三井住友カード」、「楽天銀行」と「楽天カード」などは名称こそ似ていますがあくまで別会社なので、○○カードの方を債務整理しても、銀行の口座が凍結されることはありません。


③一方、同一銀行内だとすべての口座が凍結される可能性があります。


たとえば、三菱UFJ銀行の千葉支店と柏支店に口座を開設していた場合は、三菱UFJ銀行の債務整理をすると両方の口座が凍結されます。


④また、見落としがちですが、普通預金だけでなく定期預金も凍結の対象となり、借金と相殺されてしまいます。


口座凍結の影響を最小限に抑えるためには、事前にある程度の対策を行っておく必要があります。


具体的には、

・あらかじめ銀行口座に残っている預金を引き出しておく。
・給料等の振込先口座を別の口座に変更しておく。
・公共料金等の引き落とし口座を別の口座変更しておく。

などを行っていただくのが好ましいといえます。


住宅ローンと清算価値の問題

債務整理したいが住宅ローンの残っている自宅には変わらず住み続けたいという方にお勧めの手続のひとつに、個人再生という手続があります。

裁判所の認可を受けて借金の総額を圧縮しつつ、住宅ローンだけは「住宅資金特別条項」という制度を使うことで、自宅を残すことが可能です。

ただ、ケースによっては借金の総額の圧縮があまり期待できないケースがあります。

個人再生の場合、借金を圧縮できる金額は、債務者の有している財産の清算価値の金額が下限となります。

たとえば、借金が1000万円ある方が個人再生を利用する場合、本来は最大では200万円まで債務を圧縮できるのですが、もしこの方に500万円の清算価値を有する財産を持っているのであれば、最低でも500万円までは借金をはらわないといけないルールになっています。

この清算価値の問題は、不動産の価値に左右されることが多いです。

たとえば、不動産の価値が1500万円で、住宅ローンが2000万円残っており、ローンの金額が上回っている状態(オーバーローン)のケースだと、清算価値は0円になります。この場合は問題ありません。

一方で、不動産の価値は同じく1500万円だが、長年ローンを返済し続けており、住宅ローンの残りは1000万円まで減っていたというケースだと、清算価値は1500万円-1000万円=500万円という計算になります。

また、近年だと地価の上昇により不動産の価値が上がっており、いつの間にかローンの残額を上回っていたというケースもあります。

千葉県内でも、地域にもよりますが昨年比で10%近く地価が上がっているエリアもあるようです。

そういったケースだと、持ち家の不動産価格の上昇は本来うれしいことではあるのですが、個人再生の関係だと不利になってしまうことがあるので注意が必要です。

弁護士業と書籍

インターネットで多くの情報を手に入れることができる時代ではありますが、弁護士のような専門性の高い仕事を完遂するには、専門書籍や文献を調査・参照しないといけない場面は多くあります。

書籍の検索・購入もネットを通じてできるので便利ではありますが、書籍の中身を試し読みすることができないという難点があります。

予算と本棚のスペースが無限にあるのなら手当たり次第に購入してもよいのですが、なかなかそうもいきません(特に、法律書は高いし分厚いことが多いので・・・)。

なので、アナログ思考ではありますが実店舗で実際に手に取って選んで買うのが私の好みです。

東京駅の事務所で執務していた時は丸善が、池袋の事務所で執務していた時はジュンク堂が近くにあったので、よくお世話になりました。

柏事務所の近くだとそこまでの大型書店がないので少し苦労しており、休日は本を探しに東京に旅たつこともあります。

また、大型書店以外にも法律書専門の書店に足を運ぶこともあります。

私の母校は大学・法科大学院ともに東京の水道橋・神保町にあるのですが、そこにある「丸沼書店」は法律書専門書店として非常に品揃えが豊富で信頼度の高いお店です。

学生時代から現在まで15年以上お世話になっています。

弁護士業は専門性が大事だと思いますが、書店も専門性が高いと心強いです。

最近は法律書以外でも医療や福祉関係の書籍を参照したいことが多く、そういった書籍に強い書店を開拓したいところです。

医師が障害年金の診断書を書いてくれない

障害年金の申請のためには医師が作成する診断書が必要になります。


逆に言えば、診断書を入手できなければ障害年金の申請はできないことになります。


しかし、医師に診断書の作成をお願いしたのに、診断書を書いてくれないというケースがあります。相談に乗っていると、いくつかのパターンがあるように思います。


①「症状が軽いので書けない」といわれた


本来、症状が軽いのか重いのか、年金を受給できるかできないかの判断は、最終的には年金事務所が行うことであり、医師が診断書の作成段階で門前払いにする理由にはなりません。


しかし、医師からこのように言われてしまって申請をあきらめてしまうという方は少なくないようです。


②「当時の主治医が退職していないから書けない」といわれた


遡及請求のために過去の状態の診断書を書いてもらいたい場合によく問題となります。


多くの場合は、もし病院にカルテが残っているならそのカルテの記載に基づいて現在在籍している医師に書いてもらいますが、後述する医師法上の義務は実際に診察した先生には及ばないので法律上強制することができません。


また、当時のカルテの内容が不十分だったりすると。「カルテに書いていないことは書けない」と断られてしまうおそれがあります。


③「専門医ではないので書けない」といわれた


大学病院や総合病院で検査して病気が発覚したが、治療自体は近所の町医者で治療している場合などに出くわすケースです。


そう言われたのでいざ大病院の先生にお願いしたら、「普段治療している町医者の先生の方がよく状態を知っているはずだからそっちに書いてもらうように」とたらいまわしにされてしまうパターンもあります・・・


④理由はよくわからないけど書いてくれない


身も蓋もない話ですが、実際相談を受けているとこういうケースは多かったりします。


実際の理由はわかりませんが、障害年金の診断書は記載しないといけない内容も多く、経験の少ない先生だとどう書いていいかわからないとか、多忙な先生だと書く時間がない(基本的に日中は診察があるので、ほとんどの医師は夜に残業して書いています)とか、診断書の内容が認定に大きく影響してくるので、受給できなかった場合にクレームが来るのを避けたい、といった理由で書きたくないという先生もいるのではないかと勝手に想像しています。


診断書の作成に関して法律はどうなっているかというと、医師法19条2項は、患者から診断書の交付を求められた場合は正当な理由なく拒むことはできないとされています。


とはいっても、弁護士が声高に「作成義務があるんだ!」と法律を盾にしてなんとか書いてもらったとしても、形式的な体裁だけ整えられた診断書が出来上がってくるだけで、肝心の内容はあまりいい出来でないということは少なくありません。


普段の問診では伝えきれていない症状や日常生活の支障をしっかりとお伝えして、医師に理解してもらうことが大事だと考えています。


そのためには、症状等をまとめたメモなどを用意してお渡しするなどの作戦が考えられます。


また、診断書のポイントがよくわかっていない医師もいるので、その場合は弁護士から何が重要なのかを説明したりすることもあります(押しつけがましい説明は不快に思う先生もいるので、誤解を招かないように慎重かつ丁寧な対応が必要です)。


弁護士法人心の障害年金申請サポートは診断書の作成段階からサポートさせていただくことも可能なので、もし診断書の作成を断られてしまっても、諦めないでまずはご相談いただければと思います。


初診日が未成年の頃の場合の障害年金申請

障害年金の申請において、初診日が未成年の頃だった場合は、成人(20歳)以降に初診日があった場合と比べて、いくつか異なる点があり、申請の際には注意が必要です。


まず、初診日が未成年の頃の場合は、年金の納付要件は不要になります。


これは、そもそも未成年の場合は原則として年金の加入資格がないからです。


次に、原則として障害基礎年金での申請となります。


障害基礎年金の場合、受給対象になるのは1級・2級相当の障害に限定されるため、受給のためには比較的重い症状が求められることになります。


ただし、未成年のときから就労していて会社の厚生年金に加入しており、それ以降に初診日がある場合は障害厚生年金での申請が可能です。


また、初診日が未成年の場合、一定の収入があると、障害年金の支給額が半額になったり停止されたりする場合があります。


障害認定日についても、原則は初診日から1年半後は認定日になりますが、1年半経過時点においてもまだ20歳に達していない場合は、20歳になった時が障害認定日になります。


初診日が未成年の頃の場合は、年金の納付要件が免除される反面、支給条件の関係等で不利になることがあります。


一方で、成人以降が初診日とされてしまうとそもそも年金の納付要件を満たすことができず障害年金を受給できない場合に、未成年の頃が初診日であると証明することで、納付要件を免除されたおかげで救済されるというケースもあります。


たとえば、成人以降に受診して精神の障害が発覚し、受診時点では納付要件を満たしていなかったケースで、詳しい検査の結果、知的障害もあることが発覚し、未成年の障害であるとして障害年金を受給することができたケースなどがあります(※知的障害は、受診が20歳以降であっても、例外的に出生時が初診日として取り扱われます)。


また、支給基準とは別の問題として、成人後しばらく経ってから障害年金を申請しようと思ったら、初診日が未成年の頃だったため、昔過ぎて資料が揃えられなくて困っているという話もよく聞きます。

未成年の頃からの障害をお持ちの方は申請の際に難しい問題が生じることがあるので、申請前に弁護士にご相談いただくとよいでしょう。


個人再生と履行可能性

債務整理の方法のひとつに、個人再生という手続があります。


裁判所の認可を受けて債務総額を減額してもらい、減額後の金額を3年から5年をかけて計画的に完済していくというものです。


破産と違って借金がゼロになるわけではないので、この手続が認められるためには、履行可能性(=借金を計画通りに返済できること)が必要です。


たとえば、家計が赤字で貯金を切り崩しながら生活しているような場合ですと、貯金が尽きれば返済も行き詰ってしまうのは明白なので、履行可能性が認められないと判断されてしまう可能性が高いです。


個人再生の手続では、家計表や給与明細、銀行口座の取引履歴などの提出が求められますが、これらは裁判所が収支をチェックし履行可能性があるかどうかを判断するための材料となります。


裁判所は現在の状況や過去の実績を重視するので、「これから副業を始めるので収入はもっと増える見込みだ」とか、「節約に努めて出費を減らします」といった不確定な話はなかなか通用しません。


裁判所への申立てに先立って、事前にしっかり準備する必要があります。


なお、履行可能性の判断については裁判所によって考え方に多少の違いがあるようですが、私が在籍する柏事務所の管轄である千葉地方裁判所松戸支部の場合だと、月々の恒常的な生活費に加えて2~3万円程度の余剰がないと、履行可能性について疑問ありと指摘される傾向にあります。


月々の収支がプラスマイナスゼロで一切貯金ができないような状態だと、臨時の出費や税金の支払いがあった場合に生計が成り立たなくなってしまうおそれがあるからです。


生活保護と障害年金

病気やケガで仕事ができなくなり生活保護を受けているという方から、障害年金の申請について相談を受けることがあります。


生活保護費と障害年金は、両方を同時に満額受け取ることはできません。



たとえば、生活保護受給額が月13万円、障害年金受給額が10万円だとすると、最終的にお手元に残る金額は13万円+10万円=23万円ではありません。



この場合は、障害年金からは10万円、生活保護からは13万円-10万円=3万円もらえる計算になり、合計でもらえる金額は13万円と変わらないことになります。



ただし、障害年金に該当する場合は生活保護の障害者加算がもらえるため、住んでいる地域に応じて1~2万円程度加算されるメリットがあります。



生活保護の場合、悩ましいのが障害年金申請を代行させていただく際の弁護士費用についてです。


当法人の場合、障害年金の申請代行は成功報酬制で引き受けさせていただくことが多く、通常は数か月分が初回入金分としてまとめて支給されるので、そこからお支払いをしていただくことを想定しています。



しかしながら、生活保護の場合、この初回入金分は収入扱いとなるため原則として市町村に返還しなければならず、お手元に残すことができません。



ただ、市町村によりけりですが、障害年金を申請するための弁護士費用は収入を得るための必要経費であったという理屈で、弁護士費用相当額の返還を免除してくれる場合があります。



たとえば、初回入金分が30万円、弁護士費用が15万円の場合ですと、弁護士費用を払った後の30万円-15万円=15万円分だけ市町村に返還すればよいということになります。



この場合は、弁護士費用は事実上市町村が負担するような形となり、依頼者の負担はゼロということになり大変助かります。



相続土地国庫帰属制度

令和5年4月27日から、相続土地国庫帰属制度という制度が新たに施行されることとなりました。



これは、相続財産の中に管理が困難な土地がある場合に、一定の条件の下で国庫に帰属させる(引き取ってもらう)ことができるという制度です。



本来、相続財産を引き継ぐときはすべてを包括して継承する必要があり、たとえば、預金のようなプラスの財産だけを受領する一方、いらない土地は放っておくということはできませんでした。



もしどうしても不要な土地を手放したいというのであれば相続放棄を行う必要があり、その場合は、他のプラスの財産を受領することは諦めないといけませんでした。



また、不要な土地をめぐって相続人間で押し付けあいになることも少なくありませんでした。



本制度はこういった問題の解決策の一つになることが期待されています。



もっとも、この相続土地国庫帰属制度がどこまで有効活用されるかは、現状未知数と考えています。



というのも、土地を国庫帰属できるかどうかの条件がけっこう厳しく、

・建物がある土地

・担保権や使用収益権が設定されている土地

・他人の利用が予定されている土地

・特定の有害物質によって土壌汚染されている土地

・境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地

などを申請することはできません。



また、

・一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地

・土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地

・土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地

・隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地

・その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地

なども国庫に帰属させることができません。



国庫に帰属させるつもりで相続したが実際は条件を満たしておらず、相続放棄しようと思っても時すでに遅し・・・(※)というような事態が起こらないか、非常に心配しているところです。



(※相続放棄は相続発生から原則3カ月以内に手続きを取らないといけません。)



弁護士法人心では相続の相談も受け付けておりますので、相続が発生したら早い段階でご相談いただければと思います。



ギャンブルによる借金でも破産できるのか

破産の相談で、「借金の原因がギャンブルなので、破産はできないのではないか?」という質問をされることが結構あります。


破産には「免責不許可事由」というものがあります。


これに該当してしまうと、免責、つまり借金を帳消しにしてもらうことはできなくなってしまいます。


破産法252条1項には、いかなる行為が免責不許可事由に該当するかについて列挙されています。


そのひとつに「浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。」というのがあります。


これだけ見ると、まさしく「賭博(=ギャンブル)」による借金は、免責が認められないと読めます。


ですが、すべてのギャンブルがこの免責不許可事由にあたるかというと、実はそうとは限りません。


たとえば、毎月1万円程度と予算を決めてその中でギャンブルを楽しんでいたような場合は、「賭博」ではあるけども「著しく財産を減少させ」たとはいえないとして、免責不許可事由には該当しないと主張する余地があります。


また、破産法には裁量免責という規定があります。


252条2項には「同項各号(※上述の252条1項)に掲げる事由のいずれかに該当する場合であっても、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる」とあります。


要するに、「免責不許可事由があっても、事情次第では免責を認めることがあるよ」ということです。


上記のように「そもそも免責不許事由にはあたらない」とか「仮に免責不許可事由に該当するとしても、これこれこういう事情があるから裁量免責が認められるべき」と主張して免責を認めさせることが、ある意味で破産を扱う弁護士の腕の見せ所であるともいえます。


ですので、後ろめたい気持ちもあるかもしれませんが、もしギャンブル等での借金がある場合には、相談の際には隠さず弁護士にはお伝えいただければと思います。意外となんとかなったりします。